全日駐規格「汎用(共通)サービス券」の導入について
秋田商工会議所 まちづくり推進課
課長 渡邉 靖
1.現状
秋田商工会議所では、中心市街地の路面店、商店などの小規模事業者の駐車場不足を解消するため、平成10年に有人式駐車場を中心とする19の駐車場と131店の商業者が加盟した共通駐車サービス券事業をスタートさせました。平成13年に大型商業施設が新たに加盟店となったことから飛躍的に利用が増加し、平成15年には最高となる226万枚(100円券)が利用されました。
その後、有人式駐車場の廃止や商業施設の撤退などにより規模が縮小し、平成30年には、11駐車場(機械式8カ所、有人式3カ所)収容2,600台を対象に共通駐車サービス券(以下、「紙サービス券」という。※発行当日のみ有効)を118万枚発行しており、各駐車場から使用済みの紙サービス券を回収した後、加盟店に再請求をする「後払い精算方式」で運用しております。
2.導入の経緯
これまで機械式駐車場では、加盟店から受け取った紙サービス券を、それぞれの駐車場が指定する場所で磁気サービス券に再交換する手間が発生しておりました。再交換を委託する業者を確保しなければならないことや営業時間を過ぎると引き換えできないことから、新たな機械式駐車場ができても共通駐車サービス券事業への加盟には繋がらない状況が続いていました。
こうした中で、有人式駐車場の廃止が進み加盟駐車場が減少する一方、市街地にはコインパーキングが増加していく状況を踏まえ、駅前商店街から「①共通駐車券の対象駐車場の拡大、②機械式駐車場に対応するシステムの導入」を望む要望書が提出され、それを受けて平成30年4月に共通駐車券運営委員会を立ち上げ「共通磁気サービス券」導入の検討に入りました。
3.概要
事前に駐車場事業者との打合せを進める中で、全日駐規格の汎用(共通)サービス券(以下、「JPA券」という。)について確認したところ、加盟する駐車場事業者が導入している機械メーカー(アマノ・日本信号)で相互利用が可能であることが判明したことから、既存の紙サービス券に加えて、新たに機械式駐車場に対応する共通磁気サービス券(100円券)を追加することとし、運営委員会では、
①利用客が紙サービス券を再交換する不便を解消する。
②機械式駐車場への対応基盤を整備し、加盟駐車場の拡大を図る。
この2点を掲げて、JPA券の導入に向けた環境整備の検討を進めました。
4.導入状況と課題
8カ所ある機械式駐車場のうち、改修工事や精算機の入替えにより5カ所でJPA券が導入され、さらには大型立体駐車場1カ所とコインパーキング15カ所が新規に加盟することになり、これまでの11駐車場2,600台収容から、27駐車場3,350台収容(有人式やJPA券非対応の機械式を含む。)に拡大した共通駐車サービス券事業が4月1日からスタートいたしました。
これにより、駅前が中心であった加盟駐車場の範囲が広がり、加盟店・利用客の利便性向上や新規加盟店の増加につながるなど、需要の拡大をもたらしております。
その一方で、これまでの紙サービス券を維持したままJPA券を導入したことにより、加盟店では利用客に駐車場所を確認して2種類あるサービス券のうちどちらを交付するか判断するオペレーションが発生するほか、「後払い精算方式」であることから、利用駐車券の回収や仕分け作業などの事務処理が増加するなど、省力化は道半ばの状況にあります。
5.今後に向けて
今回の導入により、利用客の不便解消と加盟駐車場の拡大という課題は、おおむね達成出来たと考えております。しかしながら、JPA券非対応の機械式の駐車場や有人式の大型駐車場へのJPA券の導入に向けては、新たな運用コストの発生や事務処理への対応を踏まえた検討が求められております。
秋田商工会議所としても、QRコード等の低コストで導入可能なキャッシュレス決済手法やスマートフォンの様々なアプリが開発される中で、今後どのような駐車サービスの付与が普及するのか、さらに、何を活用することが運用コストや事務処理の軽減につながるのかなど駐車場事業者や加盟店との検討を重ねるとともに、全日本駐車協会や機械メーカー等との関係を密にし、駐車場事業者と加盟店の相互がWin-Winとなる共通駐車サービス券事業となるよう、引き続き同事業の改善に取り組んでまいりたいと考えております。
以上