駐車対策の現状2015
第1 駐車問題の現状
1 瞬間路上駐車台数
違法駐車は、約10年前と比較すると大幅に減少しているものの、依然として幹線道路等における交通渋滞の要因となっているほか、駐車車両への衝突事故や駐車車両に起因する交通事故が後を絶たず、道路交通への著しい障害となっている。平成25年に実施した調査によると、東京都特別区における瞬間路上駐車台数は約5万7,000台(前年比約2.5%減少)であり、大阪府内における瞬間路上駐車台数は約2万6,000台(前年比約15%減少)であった(図表1参照)。
図表1 東京都特別区及び大阪府における瞬間路上駐車台数の推移(平成15年~25年)
2 駐車車両への衝突事故等
平成25年中の駐車車両への衝突による交通事故については、人身事故の発生件数が1,2000件、死亡事故の発生件数が55件(死者58人)であった(図表2参照)。
また、駐車車両に起因した交通事故については、人身事故の発生件数が1,915件、死亡事故の発生件数が15件(死者15人)であった(図表2参照)
図表2 駐車車両への衝突による交通事故の推移(平成15年~25年)
3 駐車問題に関する110番通報
平成25年中の110番通報のうち駐車問題に関する要望・苦情・相談の件数は約17万2,000件であり、要望・苦情・相談に関する110番通報件数の約15.7%を占めるなど、駐車問題に関する国民の関心の高さを示している(図表3参照)
図表3 駐車問題に関する110番通報件数の推移(平成15年~25年)
第2 総合的な駐車対策の推進
1 駐車規制の延長距離
駐車規制は、駐車による交通の危険を防止し、交通の円滑を図るため、道路の構造や地域の交通実態に応じて実施している。
平成25年度末現在、全国の都道府県公安委員会が行っている駐停車禁止又は駐車禁止規制の規制延長距離は約16万9,000㎞であり、一般道路の実延長距離約120万6,900km(未改良道路自動車交通不能区間を除く。平成24年4月1日現在)に対する規制率は約14.0%である。
2 より合理的な駐車規制の推進
駐車規制については、より合理的なものとなるようきめ細かな見直しを推進しており、平成16年1月から平成26年3月末までの間に、全国において、約4万2,000区間(約3万2,000km)にわたる駐車規制の解除・緩和を図っている。
今後も、必要やむを得ない駐車需要への対応が十分でない場所を中心に、地域の駐車管理構想を見直し、地方公共団体、道路管理者、関係事業者等による自主的な取組を働き掛けるとともに、以下の点に留意して、交通実態の変化に即した駐車規制を推進する。
(1)地域住民等の合意に基づく要望意見への積極的対応
駐車規制は、交通参加者や地域住民の要望意見に十分配慮しつつ、交通の安全と円滑を図る観点から、実施又は緩和を行っており、特に駐車規制の緩和に係る要望であって、地域住民等の意見に基づき具体的な道路の部分を特定して行われるものについては積極的な検討を行い、その結果に基づいて必要な対策を講じている。
≪商店街対策の実施状況≫
(2)物流の必要性への配意
物流業務が国民生活上重要な役割を果たしている一方、中心市街地を始めとする都市内において、道路上での無秩序な荷さばき等が交通渋滞等を引き起こしている例もある。そこで、貨物の積卸し又は集配のため、貨物自動車の駐車が真に必要不可欠と認められる道路の部分について、一定の条件の下で貨物自動車を駐車規制の対象から除くこととするなど、物流業務に配意した駐車規制の見直しに努めている。
≪荷さばき駐車対策の実施状況≫
商業地区等における荷さばき駐車対策として、貨物車の荷さばき需要の多い時間帯を貨物車に限り駐車規制の対象から除く規制の緩和例
(3)時間制限駐車区間規制の実施の検討
路外駐車施設の整備が十分でなく、路上における短時間の駐車の需要が高いと認められる道路の部分について、当該部分における駐車秩序を確保する必要があるときは、時間制限駐車区間規制の実施を検討することとしている。
平成25年度末現在、全国の都道府県公安委員会が行っている時間制限駐車区間規制は1,528区間(約372km)であり、パーキング・メーター1万7,338基、パーキング・チケット発給設備1,187基(駐車可能枠数7,584台分)をそれぞれ設置し、管理している(図表4参照)。
パーキング・メーター及びパーキング・チケット発給設備のうち、利用率が低いものについては、撤去を検討することとしており、撤去後は自転車レーンの整備、歩道拡幅等既存の道路空間の有効活用に配意している。
≪時間制限駐車区間規制の実施状況≫
図表4 パーキング・メーター等の設置状況の推移(平成15年度~25年度)
≪パーキング・メーターの撤去による道路空間の有効活用状況≫
(4)二輪車に配意した駐車対策の推進
二輪車の駐車需要が満たされていない地域については、地方公共団体、道路管理者、民間事業者等に対して二輪車の駐車場の整備を働き掛けているほか、地域の交通実態等に応じ、駐車規制の対象から二輪車を除くなど、きめ細かな対応に努めている。
≪二輪車に配意した駐車対策の実施状況≫
≪二輪車駐車場整備状況の年別推移(都内)≫
3 高齢運転者等専用駐車区間制度の運用
身体機能の低下が運転に影響を与えるおそれのある高齢運転者等を支援するため、道路標識により高齢運転者等専用駐車区間に指定されている場所では、高齢者等が運転し、都道府県公安委員会が交付した高齢運転者等標章を掲示した普通自動車に限り、駐車又は停車をすることができることとしている。
(1)高齢運転者等専用駐車区間の設置状況
平成26年3月末現在、高齢運転者等専用駐車区間の設置箇所数は、
- 高齢運転者等専用駐車場所が484箇所(1,470台分)
- 高齢運転者等専用時間制限駐車区間が6箇所(10台分)
となっており、高齢運転者等の利用が多い官公庁、病院及び郵便局・銀行等の周辺道路に設置している(図表5参照)。
(2)高齢運転者等標章交付状況
平成26年3月末現在の高齢運転者等標章の有効枚数は約5万2,000枚で、道路交通法第45条の2第1項第1号に掲げる者(70歳以上の者)に対し約5万枚、同第2号に掲げる者(両耳の聴力が補聴器を用いても10メートルの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえない程度の聴覚障害のあることを理由に免許に条件を付されている者、及び肢体不自由であることを理由に免許に条件を付されている者)に対し約530枚、及び同第3号に掲げる者(妊娠中又は出産後8週間以内の者)に対し約1,700枚を交付している。
4 違法駐車の効果的な取締り
(1)違法駐車の取締り
平成18年6月から現行の駐車対策法制が施行され、警察署長は、放置車両の確認事務を都道府県公安委員会の登録を受けた法人に委託することができることとされた。平成26年4月1日時点では、全国391警察署において、57法人に委託され、約2,100人の駐車監視員により、地域住民の意見、要望等を踏まえて策定・公表されているガイドラインに沿った、メリハリのある違法駐車の取締りが行われている。
平成25年中の取締り状況は、次のとおりであった。
- 放置車両確認標章の取付件数
166万4,504件(うち駐車監視員によるもの115万8,390件) - 駐車違反取締件数
170万458件(うち放置違反金納付命令138万9,428件)
また、平成25年中、放置違反金を納付しなかった者に対する滞納処分を1万6,549件(徴収件数)、車検拒否を2万4,089件実施し、放置違反金納付命令を繰り返し受けた常習違反者に対する車両の使用制限命令を3,262件発出した。
(2)悪質な運転者等の責任追及の徹底
放置駐車違反のうち、交通事故の原因となった違反や常習的な違反等悪質な違反については、運転者及び使用者の責任追及を徹底している。
【検挙事例】
- 放置駐車違反を繰り返し多額の放置違反金を滞納した上、納付命令や督促にも応じなかった悪質な滞納者(法人)に対して、道路交通法に基づき家電や衣類等を差押え、差押物品の一部を自治体等との合同公売会において換価処分するなど、強制徴収を実施した。
- 過去6か月間で3回の放置違反金の納付命令を受け、県公安委員会から車両の使用制限命令を受けたにもかかわらず、運転を禁止された車両を自己の用に供する目的で運転した者を使用制限違反として逮捕した。
(3)違法駐車車両の移動等の措置
道路における交通の危険を防止し、又は交通の円滑を図るため必要があるときは、移動保管措置を行い、違法駐車車両の早期排除に努めている。平成25年中の移動保管措置件数は2,283件であった。
5 駐車対策のための各種システムの運用
(1)違法駐車抑止システムの運用
違法駐車抑止システムは、交差点にテレビカメラ及びスピーカーを設置し、違法駐車車両を監視するとともに、必要に応じ音声で警告することにより、違法駐車の抑制を図るものであり、平成25年度末現在、112都市で運用されている。
(2)駐車誘導システムの運用
駐車誘導システムは、駐車場を探したり、その空き待ちをしている車両による交通渋滞の緩和や交通事故の防止を図るとともに違法駐車を防止するため、交通管制システムと連動して、駐車場の位置、満空状況、駐車場までの経路、交通渋滞の状況等に関する情報を運転者に提供し、空き駐車場への誘導を行うものであり、平成25年度末現在、20都市で運用されている。
6 関係機関・団体との連携による駐車対策の推進
(1)違法駐車防止条例の制定
ア 違法駐車防止条例の制定の働き掛け等
違法駐車防止条例は、自治体に違法駐車の防止に関する必要な施策の策定及び実施を義務付ける一方で、市民に違法駐車防止の努力及び自治体が行う駐車対策への協力を義務付けることにより、行政と市民が一体となって違法駐車の防止に取り組むことを趣旨とするものであり、警察では、各自治体に対し当該条例の制定を働き
掛けるとともに、その運用に必要な協力と支援を行っている。
平成26年4月1日現在、違法駐車防止条例を制定している自治体の数は273(202市14区55町2村)となっている(図表6参照)。
イ 条例制定自治体における違法駐車防止活動
条例を制定した自治体においては、条例に基づいて違法駐車防止の重点地域や重点路線を定め、違法駐車防止指導員等による広報啓発活動等の違法駐車防止活動が積極的に行われている。
図表6 違法駐車防止条例の制定の推移(平成16年~26年)
(2)関係機関・団体等との連携の強化
ア 広報啓発活動
警察では、都道府県交通安全活動推進センター、報道機関等の協力を得て、違法駐車に起因する交通事故の実態、交通渋滞の状況等違法駐車の危険性、迷惑性についての情報の提供を積極的に行うなど、違法駐車抑止のための広報活動を進めている。
また、地域交通安全活動推進委員等の民間の指導者を対象とする研修会の開催、違法駐車の実態等に関する資料の配布等違法駐車抑止のための活動が効果的に行われるよう必要な支援を行っている。地域交通安全活動推進委員は、平成26年4月1日現在、1万8,619人(うち女性3,686人、約20%)が公安委員会から委嘱を受け、広報啓発活動、協力要請活動、相談活動等を行っている。
さらに、トラック協会、安全運転管理者協会等を通じて、各企業に対し従業員による車両の自宅持ち帰りの自粛を求めるキャンペーン等を行っている。
イ 駐車対策協議会等の設立による各種駐車対策の推進
警察では、地方公共団体、道路管理者等とともに駐車対策協議会等を設立し、地域における駐車問題を協議・検討して、各種の駐車対策を推進している。
(3)駐車場の整備等の働き掛け
ア 駐車場の整備状況
平成25年3月末現在、駐車場の設置箇所数は、
- 都市計画駐車場※1が459箇所(11万9,214台分)
- 届出駐車場※2が8,788箇所(166万4,443台分)
- 附置義務駐車施設※3が6万6,561箇所(294万9,036台分)
となっている(図表7参照)。
イ 駐車場の整備及び有効利用についての働き掛け
警察では、地方公共団体に対し、駐車場附置義務条例の制定、公共駐車場の整備等を働き掛けており、平成25年3月末現在、駐車場附置義務条例を制定している都市の数は198(荷さばき駐車場の附置を義務付けている自治体の数は90)となっている。
また、駐車対策協議会等の場を通じて、官公庁及び銀行等民間の駐車場の休日開放、公共駐車場及び民間駐車場を商店街利用者が共同で利用する共通駐車券の発行等を働き掛けるなど、既存駐車場の有効な利用について積極的な働き掛けを行っている。
図表7 駐車場の整備状況(平成14年度末~24年度末)
※1 都市計画駐車場
都市計画上必要な位置に適正な規模で永続的に確保され、またその対象とする駐車需要が広く一般公共の用に供すべき基幹的なものであり、都市計画に定められた路外駐車場をいう。
※2 届出駐車場
都市計画区域内において、自動車の駐車の用に供する部分の面積が 500㎡以上の路外駐車場を設置し、その利用について駐車料金を徴収するものは、国土交通省令で定めるところにより、路外駐車場の位置、規模その他の必要事項を都道府県に届け出なければならない。この届出をされた駐車場を届出駐車場という。
※3 附置義務駐車施設
地方公共団体は、駐車場整備地区内において、一定規模以上の延床面積をもつ建築物を新築・増築するものに対して、条例でその建築物又はその建築物の敷地内に自動車の駐車のための施設を設けなければならない旨を定めることができる。この条例に基づき整備される駐車施設を附置義務駐車施設という。
7 バリアフリーのための駐車対策の推進
警察では、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に基づく重点整備地区の生活関連経路を構成する道路等、高齢者、障害者等が生活上利用する施設の周辺等において、バリアフリーを妨げる横断歩道上、バス停留所周辺、視覚障害者誘導用ブロック上等の違法駐車車両に対する取締り、違法駐車防止についての広報啓発活動等を推進している。
8 保管場所の確保対策の推進
⑴保管場所証明等
ア 保管場所証明等
道路が自動車の保管場所として使用されることを防止するため、自動車の保管場所の確保等に関する法律(以下「保管場所法」という。)に基づき、登録自動車の保管場所証明書の交付、軽自動車の保管場所に係る届出の受理等を行っている。平成25年中の保管場所証明申請の受理件数は768万8,967件である(図表8参照)。
図表8 保管場所証明申請受理件数の推移(平成15年~25年)
イ 保管場所標章の交付
警察署長は、登録自動車の保管場所証明書を交付したとき、軽自動車の保管場所の届出を受理したとき等は、自動車の保有者に対して保管場所標章を交付しており、保管場所標章の交付を受けた者は、保管場所標章を自動車の見やすい場所に表示することとされている。
平成25年中の保管場所標章の交付件数は901万3,013件である(図表9参照)。
図表9 保管場所標章交付状況
ウ 保管場所証明等の適用地域
保管場所証明等の適用地域は、登録自動車については東京都特別区並びに全ての市、町及び一部の村、軽自動車については東京都特別区及び一部の市とそれぞれ定められている。
⑵保管場所法違反等の取締り
道路上を自動車の保管場所として使用し、又は自動車を道路上に長時間駐車するいわゆる青空駐車や、自動車の保管場所を確保していないにもかかわらず、自動車を保有するために、自動車の使用の本拠の位置、保管場所の位置等を偽って保管場所証明を受けるいわゆる車庫とばしは、道路使用の適正を阻害するほか、道路交通の安全と円滑に支障を及ぼすことから、保管場所法違反等の取締りを推進している。
平成25年中の青空駐車等の取締件数は3,494件、車庫とばし事件の検挙件数は29件であった。