機械式立体駐車場の安全対策の強化について
一般社団法人全日本駐車協会
国土交通省より標記について協力の依頼がありました。
平成29年12月に取り纏められた機械式駐車装置安全対策サブワーキンググループによる『機械式駐車装置の安全確保について』の概要を掲載いたします。
1.機械式駐車装置の安全確保に係る取組の現況と課題
⑴普及状況
- 機械式駐車装置は、昭和35年(1960年)に日本で初めて導入された。
- 平成26年(2014年)時点、全国で約26万基が設置されていることが把握できている。
⑵事故発生状況
- 普及に伴い、装置内の無人確認不足などによる装置特有の人的被害、物的被害を生じる事故が相当数発生している。
- 平成19年(2007年)6月~平成29年(2017年)3月に(公社)立体駐車場工業会が把握した事故は少なくとも433件。この内、死亡・重症に至った重大事故は36件。重大事故の主な発
生状況は、「装置内に人がいる状態で機械が作動」が約4割を占め、このほか「作動中の装置に侵入・接触」が約2割、「人の乗降・歩行時の転倒・落下」が約2割等。重大事故の発生場所は、マンション駐車場が6割弱、月極駐車場が2割弱を占め、利用者が自ら操作するケースでの事故が多いと推察される。
⑶これまでの安全確保に係る取組
- 上記を踏まえ、これまでに以下のような安全対策に係る取組がなされている。
(技術的基準の適用)
①構造及び設備に係る大臣認定制度
- 駐車場法施行令第15条の規定により機械式駐車装置を用いる路外駐車場については、技術的基準の構造又は設備と同等以上の効力があるかを国土交通大臣が個別に認定しており、認定を受けた装置は2,121件。
②安全性に係る新たな大臣認定制度
- 平成26年(2014年)に機械式駐車装置の安全性を確保することを目的に駐車場法施行規則の一部を改正。構造及び設備に加えて安全性についても基準を定めてこれらの基準への適合を認定の要件とした。平成27年(2015年)1月から施行。平成29年(2017年)9月末時点で大臣認定を受けた装置は251件。
(製造者等への安全確保の周知・啓発)
③機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドラインの策定・改定
- 平成26年(2014年)3月に、製造者、設置者、管理者、利用者の各主体が取り組むべき事項をとりまとめた「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」を公表。消費者安全法に基づいて設置されている消費者安全調査委員会による調査等を踏まえ同年10月に同ガイドラインを改定。
④利用者等への適正利用の周知
- 国土交通省、消費者庁及び(公社)立体駐車場工業会では、機械式駐車装置の利用に当たっての注意喚起や安全な利用のためのチラシ、シール、ポスターを作成。これらを製造者や保守点検業者に配布し、周知・啓発の協力を依頼。また、(公社)立体駐車場工業会では、機械式駐車装置が有する危険性や安全な利用方法等を周知するためにパンフレットやDVDを作成し、装置の設置者、管理者等に対して、定期的に安全講習会を開催するなど、安全かつ適正に利用するための啓発活動を実施。
⑤「『機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン』の手引き」の策定
- 平成28年(2016年)9月に、製造者、利用者等各関係主体の機械式駐車装置の安全確保に係る取組の具体的な実践方法や実施上の留意事項をとりまとめ、「『機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン』の手引き」を策定。同時に国土交通省と消費者庁は共同で、安全確保に係る取組状況を確認できる「管理者向け自己チェックシート」を作成。
⑥事故情報の収集・開示
- ( 公社)立体駐車場工業会が把握・収集した死亡・重傷に至った重大事故は、速やかに国土交通省に報告。平成19年(2007年)6月以降の重大事故情報は国土交通省のホームページで公開。
(安全確保のための基準の制定等)
⑦JIS規格の制定
- 平成27年度(2015年度)に機械式駐車設備の安全規格・JIS原案作成委員会」によりJIS規格の原案がとりまとめられ、この原案を基に国土交通大臣は平成29年(2017年)5月にJIS規格(機械式駐車設備の安全要求事項(JIS B 9991))を制定。
⑧標準駐車場条例の改定
- 平成26年(2014年)12月に地方公共団体が条例を制定する際の参考とするため国が定める標準駐車場条例の改正を行い、附置義務駐車場において大臣認定を受けた機械式駐車装置と同等の安全性を有する機械式駐車装置の設置を要請。
⑷安全確保に係る取組の課題
- 機械式駐車装置の安全確保に係る以上の取組により、機械式駐車装置の利用に係る安全性は向上してきているが、重大事故の発生を更に抑制するため、①製造・設置時の安全確保、②設置後の点検等による安全確保、③既設装置の安全確保の観点から取組の課題がある。
①製造・設置時の安全確保上の課題
- 事故が多く発生しているマンション居住者用駐車場や月極駐車場等の専用的な利用がされる駐車場については、その対象となっていない。
②設置後の点検等による安全確保上の課題
- 維持の方法や基準については、駐車場法上、特段の規定が設けられていないことから、相応の費用負担をして適切な点検を実施するかどうかは、設置者や管理者の選択に委ねられている。点検結果に基づく改修等の指摘が、費用負担等の問題から、設置者や管理者に受け入れられないケースもある。点検後に人感センサーの改修について指摘を受けたにもかかわらず放置されたまま機械式駐車装置が使用され続け、重大事故に至ったケースも存在する。
③既設装置の安全確保上の課題
- 約26万基の設置が把握されている既設装置についても安全確保に係る取組の強化が求められる。特にマンションの場合においては多数の区分所有者による合意形成が必要となることなどから、既設装置の安全確保が十分には進んでいない。
- 既設装置の安全確保を進めるためには、全国のどこにどの程度設置されているかについて正確に把握できていない。
2.機械式駐車装置の安全確保に向けた施策の具体的方向性
- 機械式駐車装置の安全は、まずは、その設置者、管理者及びそれらの者が選定した製造者や保守点検業者が確保すべきものであると考えられるが、さらに実効性を確保する観点からは、新たな取組が必要である。
⑴製造・設置時の安全確保
⑵設置後の点検等による安全確保
①標準的な点検項目と判断基準の策定
②優良な保守点検業者の登録
⑶既設装置の安全確保
3.今後に向けて(さらなる検討課題)
- 機械式駐車場の安全確保に係る取組については、実現に向けて慎重な検討を要する事項など、十分整理がされていない論点も残されていることから、以下の事項については、今後議論を継続し、引き続き検討を行うこととする。
⑴安全性を有する機械式駐車装置の確実な設置
⑵安全性能の確実な維持
⑶安全基準の不断の見直し
⑷既設装置の安全確保のための支援
※本件に関する詳細は国土交通省のHPをご確認ください。
URL:http://www.mlit.go.jp/report/press/toshi09_hh_000040.html
(添付資料の内、都市施設ワーキンググループ とりまとめ本文 参照)