これからの駐車場ビジネス(第8回)
「自動バレーパーキング実現へ向けた現状と課題」

一般財団法人日本自動車研究所
ITS研究部 部長 主席研究員 谷川 浩

はじめに

自動運転の実用化には交通事故や渋滞の削減、高齢社会の公共交通手段の確保、物流も含めた交通社会の革命的な進化など大きな期待があります。国を挙げて早期実用化に向けた様々な取り組みが行われる中、一般財団法人日本自動車研究所(以後JARI)では2016年度から自動バレーパーキング(以後AVP)システムの開発事業を受託し、事業最終年度の締めくくりとして、さる11月13日~15日の3日間にわたりお台場の商業施設の駐車場において機能実証実験を実施し、延べ1000名を超える来場者を迎えてAVPの嬉しさや事業の成果を広くアピールすることができました。ご支援いただきました全日本駐車協会会員の皆様には深く感謝する次第です。また、この結果はAVPシステムが単に駐車支援機能の進化としてではなく、人や物の移動における「駐車」そのものが大きく変わることへの期待の大きさと捉えております。この度寄稿の機会をいただき、自動運転実用化への取り組み動向やAVPシステムの内容・課題・実用化の展望などについて紹介させていただきます。

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1.自動運転の実用化に向けた取り組み動向

警察庁交通局の最新報告によれば、平成30年国内の交通事故死者数は3,532人(前年比-162人、-4.4%)、特徴として歩行中の事故や高齢者の割合が高くなっています。また、事故原因の90%以上は人間(認知判断操作)のミスに起因すると言われており、昨今のコンピュータ、通信、情報処理技術等の飛躍的な進化を考えると、人間よりも機械に任せた方が安全になるという期待から、自動運転の実用化に国を挙げて取り組まれています。また、公共交通や流通業界でのドライバー不足の問題、高齢化・過疎化が進む中山間地やかつての大規模新興団地などでは高齢者の移動手段確保の問題が顕在化しており、様々なサービスの検討や実証実験が行われています。日進月歩で進化する自動運転の今後を見通すことは難しいものの、クルマの使われ方として、自家用と事業用では進み方が異なると言われています。

図1.自動運転進化のイメージ

図1.自動運転進化のイメージ

 

⑴オーナーカー(自家用車)の自動運転

自動運転で走行するクルマの所有者もドライバーも一般個人なので、使われ方も知識や技量も様々でばらつきが大きく、安全性を確保するためには多様な使われ方や使う環境などを想定して危険に近づかせないような安全マージンまで考慮した複雑・慎重かつ膨大な設計作業が必要となります。特に、高度な自動運転(レベル3以上)では、ドライバーが運転から解放されて自動運転システムによって走行するシーンが発生しますが、万が一事故が起きた時の責任や補償のルール、周辺車両や歩行者とのコミュニケーションや信頼関係の構築なども実用化に向けて重要かつ難しい課題となります。そのため、高速道路や自動車専用道路など比較的安全を確保し易い環境において、しかも当面は安全運転の責任がドライバーに帰属する高度運転支援システム(レベル2)から始まって、安全を確保し易い環境では徐々に自動運転レベルの高度化が進み、その一方で一般道路での実用化に向けて技術の高度化や社会基盤の整備が進みますが、相当の時間が必要と推察されます。

⑵サービスカーの自動運転

バス、トラック、タクシーなどサービスカーの場合は、使い方や場所を限定できる、事業主が責任を取り易い、ドライバーや運行関係者の教育や訓練を徹底できるなど、オーナーカーに比べて安全を確保し易い条件が揃っています。この場合、うっかりミスを侵し易い人間を敢えて介在させない高度な自動運転の方が安全性が高いと言えるため、使い方や場所を限定した空間での高度な自動運転が実用化され、徐々に様々な目的や場所で使えるように進化するものと推察されます。

⑶ツナガル世界

常時インターネットに接続しているクルマをコネクテッドカーと言います。カメラやレーダーなどの高度なセンシング技術や情報処理技術を駆使して障害物を検出し道路状況に応じて安全に走行する自動運転技術と同様に、高度化した通信や情報処理技術を使って沢山のクルマを目的に応じて効率的に活用することが注目されています。最近話題のMaaS(Mobility-as-a-Service)が表すように、コネクテッドカーが自動運転で走行できるようになると、クルマは目的(サービス)のための手段に変わります。自動運転技術やクルマの開発競争だけでなく、ITやネットサービス企業なども参画して、自動運転や関連データを活用した新しいサービスの実用化や囲い込み競争が世界規模で激化しています。自動車産業のバリューが、クルマ単独からクルマを使うサービスに移ろうとしているとも言えます。

2.AVPシステム実用化への取り組み

⑴背景

国として自動運転の実用化を推進する最大の目的は交通事故死者の削減ですが、死亡事故の多い一般道路での高度な自動運転実用化には難しい課題が多く一朝一夕には進みません。そこで、経済産業省と国土交通省が主導する「自動走行ビジネス検討会」において、限定空間(限られた用途や場所など)での早期実用化に取り組むことを方針に掲げ、具体的にはトラック・バスの隊列走行、ラストマイル自動走行、駐車場内での無人AVPを国家プロジェクトとして推進することとなりました。

 

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一般に駐車場内は私有地のため、道路交通法に縛られることなく無人自動運転が可能です。また、駐車枠に自動駐車するシステムは既に実用化されており、駐車場内を低速走行で目標地点まで移動することや障害物を検出して停車することは技術的に大きな課題はありません。そこで、自動車メーカ、サプライヤ、駐車場関連事業者など業界において中立的なJARIが、関係団体の協力を得て、システムの実用化・標準化シナリオや戦略などを検討させて頂くこととなりました。

 

⑵AVPシステムとは?

目的の施設にアクセスが便利な駐車場の入り口で降車し、スマートフォンなどの端末から自動駐車のリクエストを行うと、管制センターから指定される経路で駐車枠まで無人走行・駐車し待機します。また、出庫の際も端末からのリクエストに応じて乗車場まで車が迎えに来てくれるサービスを想定しています。一部の空港や百貨店などでは人手によるバレーパーキングサービスが行われていますが、自動運転の技術を使って無人で実現しようとするものです。

図2.AVPシステムユースケース

図2.AVPシステムユースケース

図3に示すように、AVPシステムは、無人自動走行・駐車機能を備えた「クルマ」、駐車場内の安全監視や一般車両と分離する「駐車場インフラ」、交通流を円滑に制御する「管制センター」の三者で構成し、それぞれが機能分担・連動することで、安全で効率の良い駐車サービスを提供します。技術的には特段の難しい課題はありませんが、実用化の課題は、インフラとクルマの両方を同時に普及させるビジネスモデル・採算性の具体化と国際標準化です。JARIは駐車場業界と自動車業界の中立的な立場から、国際標準化や事業化の検討、社会受容性の確立などを支援します。

図3.自動バレーパーキングシステムの全体構成

図3.自動バレーパーキングシステムの全体構成

三者の機能分担については、図4に示すように、クルマのセンシングや制御機能に依存する方式、クルマのセンシング機能に頼らず駐車場に備えるカメラなどを使って車両を遠隔操作するようなインフラに依存する方式、両者の中間を取ってバランス良く機能分担する方式などが考えられます。

図4.機能分担イメージ

図4.機能分担イメージ

日本の関係者で協議した結論としては、AVP実用化のベースとなるクルマが予防安全システムや駐車支援機能などを備えている(AVPのために専用のセンサーを追加する必要がない)ことを前提とし、車両の自律障害物認識機能だけで安全性を確保するのは難しいことから、AVP専用エリアや駐車場内監視カメラ等を設けて安全性を確保することが必要と考え、三者で役割分担する方法を提案しています。一方海外に目を向けますと、ドイツのMercedes-Benz Museumで行われているMercedes-Benz/Bosch で構築した「Automated Valet Parking System」のデモ走行では、一般車両との混走を前提とし、しかもその方式は、クルマのセンシング機能を必要とせず、駐車場インフラとして配備するセンサーによってクルマの位置や周辺

の安全を監視し、管制センターがクルマの走行を細かく指示する方法を採用しています。システムの機能的な完成度は高いレベルにありますが、高価なセンサーを多用するなど実験的な要素も多く、そのままでの実用化・普及は難しそうですが、着々と開発が進められています。

 

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図5.Boschウェッブページより

図5.Boschウェッブページより

⑶駐車支援からAVPへ、進化のシナリオ(下表1)

STEP1の駐車支援システムは各社で商品化され普及が進んでおり、現在はSTEP2の自動駐車システムおよびリモート駐車システムの商品化競争が始まっています。「自動駐車システム」は、乗車した状態でドライバーが駐車を指示するだけでクルマが駐車可能な場所を見つけそこに自動駐車する機能です。「リモート駐車システム」は、ドライバーがクルマから降りた状態で周囲の安全を確認しながら、スマートフォンやリモコンを使って自動駐車&出庫を操作する機能で、狭い駐車場での乗り降りや荷物積み降しの際などに大変便利です。また、公道や公道に面した駐車場などどこでも利用できるため、今後の普及が見込まれています。最終的には、どこでも利用可能なAVPシステム:STEP4の実用化を目指していますが、駐車場内は人やクルマが交錯し接触事故が頻繁に発生するなど、ある意味において危険な空間であり、人や一般車両が混在した環境でAVPシステムが安全性を確保することは難しく、かつセンサー追加などコスト増加が懸念されます。また、AVPのクルマは管制センターからの指示に従って整然とスムースに走行しますが、一般車両はコントロールできないので、AVPで期待する駐車場の利用効率向上などが難しくなることも懸念されます。そのため、実用化の初期段階をイメージしたSTEP3では、人や一般車両と隔離したAVP専用スペースを確保することが望ましいと考えますが、普及が見込めない段階で専用スペースを確保することの難しさも懸念されます。

表1.駐車支援・自動駐車システムの進化

表1.駐車支援・自動駐車システムの進化

 

⑷ロードマップ

交通事故死削減目標「2020年までに2,500人以下」に向けて、2020年代後半に一般道で自動運転レベル3以上の実用化ニーズ、平成28年5月「官民ITS構想ロードマップ」では「2020年代後半に、レベル4の試用開始」が見込まれています。一般車両によるAVPは「限定空間での自動運転レベル4の前出し」の位置付けで、その社会実装に必要な技術や事業環境などを整備するものです。また、標準化などの協調領域が広く、事業モデルが存在しないため、技術面だけでなく事業面も検討して2020年頃の商業運用を目指すとされています。

図5.自動バレーパーキングシステム開発スケジュール

図5.自動バレーパーキングシステム開発スケジュール

 

3.実用化・普及シナリオ

実用化・事業化における大きな課題は「AVPに対応した車両と駐車場を同時に相当数配備」することですが、自動車メーカが商品を展開するにはAVPを利用可能な駐車場配備の目処が必要で、逆に駐車場側の事業者にとってはAVP対応車両の普及が見込めなければ管制センターや駐車場への新たな投資が難しいという、「鶏と卵の関係」に陥ります。それを解決する手段としては、今後急速に普及が見込まれている自動駐車システム(ボタン一つで自動駐車)、リモート駐車システム(車から降りてリモコンで操作)の設計にAVP対応機能を織り込む(後から少ない追加コストでAVP機能が利用できるようにする)ことが必要と考えております。そうすることによって、AVPを利用可能な駐車場の普及を待つことなく、AVP対応機能を容易に追加できるクルマが普及し、クルマの普及が見込めた段階から後追いでAVPを利用可能な駐車場が増えていくと、クルマと駐車場が一定規模で揃う環境がスムースに構築されます。従って最終的には、利用者がAVP対応装置(例えば簡易な通信装置やソフトウェアなど)を追加購入した時点からAVPサービスを利用できるようになる、という方法を提案しています。

 

4.標準化への取り組み

前述したように、AVPシステムは「クルマ、管制センター、駐車場インフラ」の三者が連携して機能します。もしもそれぞれの機能・仕様がバラバラになると、クルマ側から見ると利用できない駐車場が、駐車場から見ると受け入れ出来ないクルマが発生してしまいます。また、世界中での利用が期待されているため、システム全体の国際標準化が大変重要になります。ISO国際標準化の活動は既に始まっており、クルマ-管制センター駐車場インフラ間のインターフェースや各々の要求仕様、試験手順にいたるまで、TC204WG14(ITS走行制御)自動駐車SWGにおいて検討され、TC204において平成30年度にNP(提案段階)承認が得られ、標準化すべき範囲や機能などが検討されています。また、正式な標準化の活動と並行して、関係者で技術的なディスカッションを行ってきた中では、クルマのセンシング機能に頼らない「インフラ依存型」と、自動駐車・リモート駐車のセンシング機能を使った「車両-インフラ協調型」の二案が具体案として浮上しています。憶測を含む私見になりますが、今まで駐車支援システム開発を担われてきた方々は車両のセンシング機能の進化を前提とした「車両-インフラ協調型」に賛同されており、その一方で「インフラ依存型」を主張している方々はコネクテッドやMaaSなど新事業開拓を担う方々が中心で、背景にはクルマの進化に依存することなくAVPサービスの実用化を進めたい意向が感じられます。最終的に「すべてのクルマが、どこの駐車場でも、同じサービスが受けられるようにすること」が関係者に共通の願いではありますが、AVPシステムは発展途上にあり、商品化に向けての思惑は国によって企業によって様々なため、ひとつの案に纏める作業は容易ではないと予想されています。日本では自動車技術会が中心となって、国際的な議論の場でもリーダーシップを発揮し、特に、「車両-インフラ協調型」や「インフラ依存型」などタイプごとの標準化ではなく、全てに共通する要件を車両とインフラそれぞれに規定し、さらにそれらを合わせたAVPとして機能するシステム要件を制定できるよう、「2021年発行」を目指しています。

5.実証実験の概要

経済産業省・国土交通省からの受託事業として2016年度から取り組んだAVPシステム開発事業の締めくくりとして実施した機能実証実験についてご紹介します。実証実験はトヨタ自動車、アイシン精機、三菱電機、JARIの4台で実施、他に日産自動車とコンチネンタルから最新の市販自動駐車車両の展示と試乗、他に駐車場予約など最新の駐車場ビジネスに関する展示を行い、駐車場事業者や自動運転関係者だけでなく、一般来場の方々にも「駐車」に係る最新事情を知っていただく機会とすべく企画しました。これまで、各社において独自に開発された実験車両・AVPシステムを用いた各社のデモ走行は多々ありましたが、この度、ひとつの管制センターと各社独自に開発された4台のクルマで構成するシステムによる合同実証実験は「世界初」の試みであり、日本のチームワークと技術力の高さをを十二分に示すことが出来ました。

図6.実証実験会場にて

図6.実証実験会場にて

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今回の実証実験に用いたAVPシステムの概要をご紹介します。管制センターとしては、クルマやリモコン(操作端末)等からの情報を無線ネットワーク(今回はLTE使用)を通じて集約し、最適な誘導方法を計算し、クルマへ移動・停止等の指示を行っています。また、管制センター(端末)はひとつの駐車場を管理する機能で、管制センター(クラウド)は利用登録情報の管理や、複数の駐車場や周辺の交通状況等を踏まえて広域視点で全体最適化を司るイメージです。

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図7.AVP実証実験システム全体概要

図7.AVP実証実験システム全体概要

駐車場インフラとしては、実験に用いた駐車場の高精度デジタル地図を作成し、クルマが地図上で自車位置を把握するための目印として専用のランドマーク(30㎝四方のシート)を車枠ごと(約2.5mごと)に敷設しました。さらに、クルマが駐車枠を認識するために既設の白線が使われています。また、実際の駐車場で実用化する際には、入退場管理ゲートやクルマの死角をサポートする監視カメラ等の設置が必要となりますが、今回の実験では省略しています。クルマは各社独自開発のため細かい部分ではそれぞれ違いますが、基本的には車載カメラとソナー(超音波センサー)を使って車両周辺の障害物や駐車枠等を認識し、管制センターと共有する地図情報を基に指定された駐車位置まで自律走行し、自動駐車機能を使って認識した駐車枠にクルマを停車させる機能を備えています。また、自動走行中に自分の位置を学習補正するために、敷設されたランドマークの位置を駐車場地図情報と照合しています。ランドマークは、クルマがその位置を正確に認識することができれば特に形状や大きさ等に制約は無く、例えば一般の駐車場にマーキングされた数字や矢印なども使用可能と言えます。

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図8.JARI実験車両の車載センサー

図8.JARI実験車両の車載センサー

図9.自動駐車・リモート駐車のコーナー

図9.自動駐車・リモート駐車のコーナー

また、既に商品化競争が始まっている自動駐車とリモート駐車の展示・試乗コーナーを設け、機能や利便性を実際に体感していただきました。駐車場に関する展示コーナーでは、駐車場関係の皆様から多大なご支援をいただき、駐車場が抱える様々な課題や、利便性や快適性の向上に向けて実用化が進められている様々な取り組みについて、分かり易く整理して展示することが出来ました。言うまでもなく、AVPは手段であって、目的は問題を解決したり、新しい付加価値を生み出すことです。既に実施や検討されている様々な取り組みやビジネスとの連携、加えてさらなる発展形を考えることが重要であるなど、ご来場の多くの方々から貴重なご意見を頂きました。

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図10.駐車場に関する展示内容

図10.駐車場に関する展示内容

6.おわりに

我々が何らかの目的でクルマを使って移動すると目的地での駐車は必然ですが、駐車自体は目的に対して直接的な付加価値が無く、面倒な行為です。仮にAVPを、煩わしい駐車から解放する駐車支援システムの延長線上に考えるならば、その価値は恐らく限定的なものとなるでしょう。一方、レンタカーなどでは駐車をクルマの受け渡しに必要な手段と考えることもできるわけで、駐車が目的=付加価値と近い関係にあります。さらに、AVPを「クルマの所有者からクルマを預かる手段」と捉えるならば、しかも「無人=人件費不要で自在に移動させることができる」ならば、AVP機能を使って荷物の積み降ろしやクルマのメンテナンスなど色々なサービスを効率的に行える可能性が拡がります。さらに発想を飛ばして、クルマが完全自動運転(無人含む)の機能を備え、かつ個人所有ではなく共同利用の道具と考えてみましょう。ある目的で移動し、移動先では次の目的のために使われる、これが連鎖的に続くことを想像してください。一説には「現在、個人が所有するクルマは、一度新車として市場に出ると転売されながら約13年間存在します。これほど長持ちするのは1日平均約1時間(4%)しか乗らないためです。モビリティサービスに使う自動運転車では、稼働率が50%以上、つまり個人所有のクルマの10倍以上になります。(名古屋大学COI未来社会創造機構客員准教授の野辺継男氏)」と言われています。将来的にクルマを所有する形態からモビリティサービスの道具として利用する形態に移行が進み社会全体のクルマの稼働率が上がると、駐車場を時間貸しするビジネスにとっては駐車時間・駐車料金収入は減りビジネスが縮小する懸念があります。その一方で、駐車・駐車場は必要ないクルマを待機させる手段ではなく様々な目的で使い回すためのハブ機能に、さらには、交通社会全体視点でハブ機能の拡がりを考えてみると、新しい形態や付加価値が次々と創造できます。AVPの普及や、一般道路での完全自動運転が実用化されるまでには相当の時間がかかるものと推察されます。また、新しい街並みや交通社会の実現に向けた取り組みにも長い時間と大きな投資が必要となりますが、将来を想定して企画に織り込み後々の造り直しを少なくすることが重要となります。先々を見通すことは難しいことですが、新しい交通社会やサービスを実現するためのプラットホームとしてのクルマや駐車場の使われ方やあり方について、直接・間接含めて様々な関係者を巻き込んで一緒になって考えること、将来に備えてパートナーシップを組んで先行投資して行くことなどが重要となります。

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我々は、AVPを含む自動運転の技術が実用化可能な段階にあることを踏まえて、自動車の開発サイドとそれを利用するサービスサイド、さらには安全で効率的な新しい交通社会の実現を目指す政府や自治体など、皆様方連携の橋渡し役として貢献できることを願っておりますので、今後ともご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いいたします。

以上