平成31年新春駐車場研修会開催
平成31年新春駐車場研修会が4団体共催にて開催されました。
日 時:平成31年2月1日(金) 13時25分~17時
場 所:コンファレンススクエア エムプラス「サクセス」
(東京都千代田区丸の内2-5-2 三菱ビル1階)
参加者:123名(内、当協会関係80名)
1.「5G時代のモビリティ産業に向けた
NTTドコモの戦略・取組みについて」
講師:株式会社NTTドコモ イノベーション統括部
企業連携担当 山本 裕己 様
<概要>
通信産業は現在5G時代と呼ばれる段階になり、①高速・大容量、②無線区間の伝送の低遅延、③多数の端末との同時接続が可能となる。NTTドコモでは2019年9月からプレサービスを開始し、来年春の「5G」の商用サービス開始に向けて産業各界のパートナー企業とともに、新たな価値を協創する「+d」の取組みを行っている。パートナー企業のビジネスアセット・技術アセットを活用し、2018年2月より「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」を展開し、2018年12月末時点で約2,000社が参加し、新規ビジネスに向けた取組みを行っている。
NTTドコモグループの取組みとして、モビリティ産業関連については①モビリティサービス創出に関する取組み、②5Gを活用したコネクテッドカー実現に関する取組み、③スマートモビリティを支えるインフラ作りに関する取組みを行っている。モビリティサービス創出に向けて2017年11月8日にカーシェアリングサービス「dカーシェア」を開始した。また、自転車シェアリングサービス「ドコモ・バイクシェア」を2015年2月に設立し、会員数48万人、28都市で展開をしている。
インフラ創出に関する取組みとして、駐車場事業者向けサービス「docomoスマートパーキングシステム」とドライバー向け専用アプリ「Peasy」を提供している。「docomoスマートパーキングシステム」はドライバーからの問い合わせ対応や、不正駐車の監視や駆け付けサービス等の保守・運用サポートをプレステージ・インターナショナル・グループが行い、NTTドコモの「ICTソリューション」の強みの組み合わせによりサービスを提供している。「docomoスマートパーキングシステム」は車の入出庫を感知する機能を搭載したIoT機器「スマートパーキングセンサー」、通信モジュールを搭載したゲートウェイ、クラウド上の駐車場管理サーバー及びドライバーが駐車場利用時に使用する専用アプリ「Smart Parking Peasy」の4つから構成されるシステムで、本システムにより駐車場事業者はこれまで採算が合わない狭小地や変形地、表通りに面していない土地等においても短い工期で、安価にコインパーキングの開設及び運用が可能となり、空き地の一時的な駐車場への利活用が進む事で、都心や住宅街での慢性的な駐車場不足解消にも繋がる。ドライバーは専用アプリ「Peasy」から事前に空車状況を確認した上で駐車予約が可能となり、現地で駐車場を探す手間が省け、更に専用アプリ「Peasy」を通じて利用時間に応じた料金の自動決済が可能となるため、支払い時の現金の用意も不要となる。駐車料金がオンライン精算のため、現金精算機の設置が不要、ドライバーの精算に係る手間が減る。こうした駐車場事業者、ドライバー双方のメリットにより2019年1月時点で東京、大阪の二大都市圏にて200拠点以上で展開され、アプリのダウンロード数は25,000件以上となっている。「5G」商用提供開始に伴い、今後様々な業界にブレイクスルーの可能性が生まれるが、NTTドコモグループは「+d」のスタンスで、パートナーシップにより、そのブレイクスルーの実現にチャレンジしていく。
2.「自動バレーパーキング実現に向けた現状と課題」
講師:一般財団法人日本自動車研究所ITS研究部
主任研究員 野村 徹也 様
<概要>
自動バレーパーキング(AVP)の実現に向け、経済産業省、国土交通省の合同主催で「自動走行ビジネス検討会」が行われている。自動走行の「市場形成」と「ビジネス獲得」両立に向けた戦略を検討しており、主な検討課題として、協調領域と競争領域の戦略的切り分け、産学連携の促進、国際的なルールづくりに向けた体制の整備と自動走行の「将来像」の共有がある。自動走行が適用される「環境」や「用途」が限定され、技術的な課題が少ない、既存技術の組合わせで実現可能と推察される具体的なアプリケーションサービスについて、「制度やルール」「事業性」等について具体的な課題の洗い出しと対策方策を検討し、実証実験等を通じて有用性を検証する。具体的にはトラック・バスの隊列走行、ラストマイル自動走行、駐車場内での無人自動バレーパーキングシステムを国家プロジェクトとして推進することとなった。自動バレーパーキングシステムは、車、管制センター、駐車場インフラの協調制御で構成され、その役割として車は低速で周辺の安全を確認しながら、指定された経路を走行し指定位置に駐停車し、駐車場は一般車両や歩行者と分離する構造や、監視カメラ等を設けて安全性を確保し、管制センターは地図配信、自動駐車車両の走行・駐車方法を計画し管理する。関連・先行する商品として、(1)リモートパーキング/自動駐車システムと(2)高速道路等での自動運転システムの実用化が、予想されるが自動バレーパーキングシステム搭載車は、商品構成上から考えて(1)、(2)の機能を備えていることを前提として考えることが妥当と思われる。
実用化・普及に向けたシナリオの基本的な考え方として先ずは国際標準にする計画で、車側の装備の展開を行い、続いてインフラ整備を行う事でシステムの実用化・普及を図る。高速道路等での高度な運転支援機能と自動駐車/リモートパーキングシステムの機能が先行して普及することを前提とし、商品の実用化に含めて自動バレーパーキングに対応できる拡張可能な構造を仕込み、車側の対応準備を先行して展開する。自動バレーパーキング対応の駐車場インフラ、管制センター側の普及に合わせて、ユーザーは自動バレーパーキング対応ユニット(仮)を購入・接続し、比較的簡単に自動駐車サービスを利用できるという流れを想定している。
又、自動バレーパーキングは日本だけでなく、世界中での利用が期待され、車、管制センター、駐車場インフラ間のインターフェイスや各々要求仕様試験手順に至るまで、TC204WG14(ITS走行制御)自動駐車SWGにおいて、ISO国際標準化に取り組んでおり、平成29年度の活動でPWI(予備登録)段階、平成30年度でNP(提案段階)承認が得られ、標準化すべき範囲や機能などが検討されている。2021年発行を目指し各国と協議を重ねている。
2018年11月13日(火)~15日(木)デックス東京ビーチ駐車場2階において機能実証実験を行った。1,048名(メディア44社58名含む)の参加者があり、テレビ、新聞等多くのメディアで取り上げられた。又、アンケート結果においては早期実用化にとって重要な要素としてはAVP対応駐車場の普及が一番多く、次いでAVP対応車両の普及、安全性・セキュリティの確立、AVPシステムの標準化と続いている。
海外各国の動向について説明すると、欧州では主にドイツでは自動車メーカー、サプライヤーに加え駐車場関連事業者も共に自動バレーパーキングサービスについて取組みを開始しており、更にはサービスプロバイダーも議論に加わる事例も出てきている。ダイムラー社とBMWグループが合弁会社を設立し、カーシェア等のモビリティサービス事業を集約する事も発表されている。ブリティッシュパーキングアソシエーション、ヨーロピアンパーキングアソシエーション、アメリカIPIの3団体が共同で自動バレーパーキングの標準化に取組んでいる。欧州においてビジネスモデルが進んで検討されているわけではないが、EUディレクティブと呼ばれる各加盟国に法的拘束力を持つ指針に対し、しっかりと準備が行われている印象を受ける。利用者にやさしい持続可能な交通システムを目指すため、2050年までに達成する目標が示されていて、各業界がばらばらではなく纏まって検討していると考えられる。欧州は卓越した課題に対し関連する企業が協力して有利な新しいフィールドを作り、それから各社で競争するという戦略を取っているように思われる。中国ではアリババグループがフォード、ボルボカーズ、ボッシュとのパートナーシップを発表し、バレーパーキングの自動化事業を導入すると発表した。中国も動きは活発で今後欧州より先か或いは欧州に次いで市場形成される事が予想さる。このように各国の事情が異なるもののシェアモビリティをひとつの軸に自動バレーが導入されようとしている。
中国やインドは人口が多いため、その影響力を無視する訳にはいかないが、欧州は各国の人口は多くないため、手を組んで同じフィールドを作らなければ他地域との競争ができないが、日本は内需でも賄える人口であるために、欧州のように手を組む考え方が薄い印象である。しかし日本も駐車場業界、自動車業界の親和性を高めて互いに協力していけば、世界と渡り合えると思われる。
事業化にあたっての課題については、従来のバレーパーキングと自動バレーパーキングの比較で述べてみたい。人力バレーパーキングは初期投資はさほどかからず、運営費も主に人件費で賄われている。利用客数が増えると同様に人件費も増えていく単純明快なビジネスサービスであると言える。それに対して自動運転技術を応用したサービスは、初期費用は車に載せる車載器、駐車場インフラ、センサーから管制センターまで設置する必要がある為、多額のコストがかかる。しかしながらユーザーから見ると同じバレーサービスという事で、人力バレーサービスと同等か或いは自動で人が介在していないので安価ではないかという感覚を持ってしまう事から、自動バレーサビス利用料の価格設定を人力バレーサービスより高い設定とする事は難しいと思われる。自動バレーの難しいところは自動車メーカー、機器メーカー、ITサービス会社が揃っただけではまだ不足で、サービサーの立場である企業が必要であるが、現状は不足している状況である。サービサーはITサービス企業でも行う事は可能であり、自動車メーカーがサービサーになるケースもある。
今後更なる自動バレーパーキングの推進には国等からの補助が必要であるが、例えばETCの取組みは国家プロジェクトとして高速道路の渋滞緩和のため、国からの支援を受けた。ETCはあくまで決済部分だけであるが、渋滞緩和が目的であった事から自動バレーにおいても渋滞緩和に繋がる事から、ETCと同様に国からの支援を受ける事が実現すれば更なる推進に繋がる。現在、法的問題は残っているが一部では駐車場予約は始まっており、その次の段階には「ダイナミックプライシング」が始まる事になると思われる。IoTが普及してくれば早晩車枠管理がリアルタイムに出来て、シリアルに先の情報まで取り込む事が確実となり航空運賃や宿泊料金等と同様な形式になっていくと思われる。その先には自動バレーサービスがある訳で、専用出入口や乗降者ゲート、限定空間を作らなければならない等、構造要件を共有しつつ、準備をしていく事が重要である。他業種、他サービスと情報を共有しつつどのように準備をするべきか議論しながら自動バレーパーキングの商業運行に向けて進めていきたい。
3.「駐車場政策の最近の動向について」
講師:国土交通省 都市局 街路交通施設課
企画専門官 山田 道昭 様
<概要>
平成29年12月、国の審議会で駐車場を含めた都市施設の整備について議論が行われ、「まちづくりと連携した駐車場施策の推進」が取り纏められた事を受け、平成30年7月、国土交通省より「まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン(基本編)」を公表した。その中では、駐車場施策の基本的な考え方は量的、質的な観点からまちづくりの一環として取り組むべきであると示しており、まちづくり計画等を踏まえた供給量と配置の適正化が必要である。
今後の駐車場政策の方向性は、駐車需要は乗用車だけではなく、荷捌き駐車施設、自動二輪車駐車場、観光バス駐車場、バリアフリー化等多様なニーズがあり夫々への対応が必要である。
又、機械式立体駐車場の安全対策については安全性の確保された機械式駐車装置の普及促進が必要である。平成29年12月、国の審議会で機械式駐車装置の安全確保について議論が行われ、「機械式駐車装置安全対策SWGとりまとめ概要」を受け、昨年7月国土交通省より「機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針」を公表した。機械式駐車設備の維持管理に係る課題から、機械式駐車設備の知識に乏しいビルオーナーや管理組合の方などが、自ら管理している機械式駐車設備を駐車場法施行令に定める技術的基準に適合させるための指針等が必要なため、機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針や、機械式駐車設備標準保守点検項目、点検周期の目安を示した。
又、駐車場法の関連法規の直近の主な動向として平成30年に都市再生特別措置法改正により、都市再生駐車場施設配置計画制度が創設された。現行の画一的な建物単位の駐車場附置義務条例により、一部では稼働率が2~3割台と大都市都心部で余剰駐車場が発生しており、大都市都心部における駐車場の附置義務の適正化のため、都市再生緊急整備地域において、都市再生緊急整備協議会(民間事業者も参画)が一定の区域において、附置義務駐車場の台数と配置に関する計画を定めた場合、既存条例による一律的規制内容は適用されず、計画に即して駐車場を設ける事で足りる事とした。この結果、民間事業者の不要な負担の軽減を図るとともに、地域の防災性の向上にも繋がり、エリア毎で附置義務台数を低減したり、駐車場の配置を柔軟に検討する事が可能となった。又、バリアフリー法改正により、路外駐車場管理者による利用者・地方公共団体への情報提供が努力義務となった。公共交通機関や建築物等のバリアフリー化は着実に進んできたところではあるが、高齢者、障害者等が安心して外出するためには、バリアフリー化されている施設の情報を明らかにする必要がある。このため、障害者、高齢者等へのバリアフリー情報の提供の促進を図るべく、管理者等による情報提供に係る努力義務を設けた。又、高齢者、障害者等のまちなかにおける回遊性の向上のためにはバリアフリーマップが有用であり、市町村によるバリアフリーマップの作成に際しては円滑に情報収集ができるよう施設設置管理者の市町村の求めに応じたバリアフリー情報の通知義務等が創設された。最後に駐車場法施行令の一部改正により、国土交通大臣が道路の円滑かつ安全な交通の確保に支障がないと認めた場合は、路外駐車場の出入口をより柔軟に設置する事が可能となり、新たに①曲がり角から5m以内、②安全地帯の左側及びそこから10m以内、③路面電車停留場の標示柱等から10m以内、④幅員6m未満の道路が追加された。又、駐車場法施行規則改正にり、管理管理規程に定める料金の額が確定額から上限額に変更となった。これにより一度上限額を届け出ればそれを超えない範囲で自由に料金を変える事が可能となり、駐車場運営者により柔軟な料金設定が可能となった。
以上