駐車対策の現状2020

□駐車対策の現状
  警察庁交通局

第1 駐車問題の現状
 1 瞬間路上駐車台数
 平成30年に実施した調査によると、東京都特別区における瞬間路上駐車台数は約5万2,700台(前年比約2.2%増加)であった(図表1参照)。
 平成15年と比較すると、違法駐車は減少しているものの、依然として幹線道路等における交通渋滞の要因となっているほか、駐車車両への衝突事故や駐車車両に起因する交通事故が後を絶たず、道路交通への著しい障害となっている。

図表1 東京都特別区における瞬間路上駐車台数の推移(平成15年~30年)
2 駐車車両への衝突事故等
 平成30年中の駐車車両への衝突による交通事故については、人身事故の発生件数が811件、うち死亡事故の発生件数が25件(死者26人)であった(図表2参照)。また、駐車車両に起因した交通事故については、人身事故の発生件数が1,364件、死亡事故の発生件数が10件(死者10人)であった(図表2参照)。

図表2 駐車車両への衝突による交通事故の推移(平成15年~30年)


3 駐車問題に関する110番通報
 平成30年中の110番通報のうち駐車問題に関する要望・苦情・相談の件数は約9万1,400件であり、要望・苦情・相談に関する110番通報件数の総数(約75万9,400件)の約12.0%を占めるなど、駐車問題に関する国民の関心の高さを示している(図表3参照)。

図表3 駐車問題に関する110番通報件数の推移(平成15年~30年)

第2 総合的な駐車対策の推進
 1 駐車規制の延長距離

 駐車規制は、駐車による交通の危険を防止し、交通の円滑を図るため、道路の構造や地域の交通実態に応じて実施している。
 平成30年度末現在、全国の都道府県公安委員会が行っている駐停車禁止又は駐車禁止規制の規制延長距離は約17万3,600㎞であり一般道路の実延長距離約121万5,091km(平成29年4月1日現在)に対する規制率は約14.3%である。

2 より合理的な駐車規制の推進
 駐車規制については、より合理的なものとなるようきめ細かな見直しを推進しており、平成16年1月から平成31年3月末までの間に、全国において、約4万4,600区間(約3万3,500km)にわたる駐車規制の解除・緩和を図っている。
 今後も、必要やむを得ない駐車需要への対応が十分でない場所を中心に、地方公共団体、道路管理者、関係事業者等による自主的な取組を働き掛けるとともに、以下の点に留意して、交通実態の変化に即した駐車規制を推進することとしている。

 ⑴ 要望意見への積極的対応
 駐車規制は、交通参加者や地域住民の要望意見に十分配慮しつつ、交通の安全と円滑を図る観点から、実施又は緩和を行っており、特に駐車規制の緩和に係る要望であって、地域住民等の意見に基づき具体的な道路の部分を特定して行われるものについては積極的な検討を行い、その結果に基づいて必要な対策を講じている。

≪地域公共交通網形成対策の実施状況≫

地域公共交通会議等からの要望に基づいて、バス停留所(法定の駐停車禁止場所)
において乗合バスを駐車可能とする規制の緩和例

⑵ 物流の必要性への配意
 物流業務が国民生活上重要な役割を果たしている一方、中心市街地を始めとする都市内において、貨物自動車の道路上での無秩序な駐車が交通渋滞等を引き起こしている例もある。そこで、貨物の積卸し又は集配のため、貨物自動車の駐車が必要不可欠と認められる道路の部分について、一定の条件の下で貨物自動車を駐車規制の対象から除くこととするなど、物流業務に配意した駐車規制の見直しに努めている。

≪物流に配意した駐車規制の実施状況≫

貨物車の駐車需要の多い道路の部分を貨物集配中の 貨物車に限り駐車規制から除くとする規制の緩和例

貨物車の駐車需要の多い道路の部分を貨物集配中の 貨物車に限り駐車規制から除くとする規制の緩和例

【貨物集配中の車両に係る駐車規制の見直し】

 平成29年8月に「トラック・バス・タクシーの働き方改革「直ちに取り組む施策」」(自動車運送事業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議取りまとめ)に「貨物集配中の車両に係る駐車規制の見直し」が盛り込まれたことを踏まえ、各地域の駐車需要、道路環境及び交通実態を的確に把握し、駐車規制が交通の安全と円滑を確保する上で必要最小限のものとなるよう、道路管理者等と連携し、令和2年度末までに集中的に駐車規制の見直しを実施することとしている。

貨物集配中の車両に配慮した駐車規制の見直しの実施例

標識・標示の一例(場所によって規制対象や時間等の記載内容は異なります)

 ⑶ 時間制限駐車区間規制の実施の検討
 路外駐車施設の整備が十分でなく、路上における短時間の駐車の需要が高いと認められる道路の部分について、当該部分における駐車秩序を確保する必要があるときは、時間制限駐車区間規制の実施を検討することとしている。
 平成30年度末現在、全国の都道府県公安委員会が行っている時間制限駐車区間規制は1,248区間(約334km)であり、パーキング・メーター1万5,056基、パーキング・チケット発給設備1,112基(駐車可能枠数6,910台分)をそれぞれ設置し、管理している(図表4参照)。
 なお、パーキング・メーター及びパーキング・チケット発給設備のうち、利用率が低いものについては、撤去を検討することとしており、撤去後は自転車レーンの整備、歩道拡幅等既存の道路空間の有効活用に配意している。

≪時間制限駐車区間規制の実施状況≫

周辺施設の短時間利用者の利便性向上を目的とした時間制限駐車区間規制の実施例

貨物車の駐車需要に配意した貨物車専用 時間制限駐車区間規制の実施例

図表4 パーキング・メーター等の設置状況の推移(平成20年度~30年度)
注1 「メーター」はパーキング・メーターを、「チケット」はパーキング・チケット発給設備をそれぞれ示す。
 2 パーキング・メーターの駐車可能枠数は、設置基数と同数である

≪パーキング・メーターの撤去による道路空間の有効活用状況≫

≪撤去前≫

≪撤去後≫

利用率の低いパーキング・メーターを撤去し、自転車専用通行帯(カラー舗装)を整備した道路空間の有効活用例

⑷ 二輪車に配意した駐車対策の推進
 二輪車の駐車需要が満たされていない地域については、地方公共団体、道路管理者、民間事業者等に対して二輪車の駐車場の整備を働き掛けているほか、地域の交通実態等に応じ、対象を二輪車に限定して駐車可とするなど、きめ細かな対応に努めている。

≪二輪車に配意した駐車対策の実施状況≫

普通自動二輪車又は原動機付自転車を駐車可能とする規制の緩和例

3 高齢運転者等専用駐車区間制度の運用
 身体機能の低下が運転に影響を与えるおそれのある高齢運転者等を支援するため、道路標識により高齢運転者等専用駐車区間に指定されている場所では、高齢者等が運転し、都道府県公安委員会が交付した高齢運転者等標章を掲示した普通自動車に限り、駐車又は停車をすることができることとしている。

 ⑴ 高齢運転者等専用駐車区間の設置状況
 平成30年度末現在、高齢運転者等専用駐車区間の設置箇所数は、
 ・ 高齢運転者等専用駐車区間が459箇所(1,415台分)
 ・ 高齢運転者等専用時間制限駐車区間が4箇所(5台分)
となっており、高齢運転者等の利用が多い官公庁、病院及び郵便局・銀行等の周辺道路に設置している(図表5参照)。

図表5 主な周辺施設の状況

≪高齢運転者等専用駐車区間の設置状況≫

⑵ 高齢運転者等標章交付状況
 平成30年度末現在の高齢運転者等標章の有効枚数は約6万4,810枚で、道路交通法第45条の2第1項第1号に掲げる者(70歳以上の者)に対し約6万2,700枚、同項第2号に掲げる者(両耳の聴力が補聴器を用いても10メートルの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえない程度の聴覚障害のあることを理由に免許に条件を付されている者及び肢体不自由であることを理由に免許に条件を付されている者)に対し約700枚、同第3号に掲げる者(妊娠中又は出産後8週間以内の者)に対し約1,400枚を交付している。

4 違法駐車の効果的な取締り
 ⑴ 違法駐車の取締り
 放置車両の確認事務は、平成31年4月現在では、全国413警察署において、50法人に委託しており、約2,000人の駐車監視員により、地域住民の意見、要望等を踏まえて策定・公表されているガイドラインに沿った、メリハリのある違法駐車の取締りが行われている。
 平成30年中の放置車両確認標章の取付件数は、117万4,633件(うち駐車監視員によるものは81万3,802件)であった。
 また、平成30年中、放置違反金を納付しなかった者に対する滞納処分を1万3,976件(徴収件数)実施したほか、車検拒否は1万6,435件であった。さらに、放置違反金納付命令を繰り返し受けた常習違反者に対する車両の使用制限命令を2,554件実施した。
 ⑵ 悪質な駐車違反に係る責任追及
 放置駐車違反のうち、交通事故の原因となった違反や常習的な違反等悪質な違反については、運転者及び使用者の責任追及を図っている。
【事例】
 ・  パーキングメーターの料金支払いを免れる目的で、パーキングメーターに虚偽の情報を与えて駐車し不正に作動させて管理会社の業務を妨害したとして男性3名を偽計業務妨害の疑いで逮捕した。
 ・  放置違反金の納付命令後の督促状の送付を受けながらも納付しない悪質滞納者に対して、財産調査を行った上、道路交通法に基づき、仮想通貨の返還請求権の差押えによる強制徴収を実施した。

5 駐車対策のための各種システムの運用
 ⑴ 違法駐車抑止システムの運用
違法駐車抑止システムは、交差点にテレビカメラ及びスピーカーを設置し、違法駐車車両を監視するとともに、必要に応じ音声で警告することにより、違法駐車の抑制を図るものであり、平成30年度末現在、50都市で運用されている。

 ⑵ 駐車誘導システムの運用
 駐車誘導システムは、駐車場を探したり、その空き待ちをしている車両による交通渋滞の緩和や交通事故の防止を図るとともに違法駐車を防止するため、交通管制システムと連動して、駐車場の位置、満空状況、駐車場までの経路、交通渋滞の状況等に関する情報を運転者に提供し、空き駐車場への誘導を行うものであり、平成30年度末現在3都市で運用されている。

6 関係機関・団体との連携による駐車対策の推進
 ⑴ 関係機関・団体等との連携の強化
 ア 広報啓発活動
警察では、都道府県交通安全活動推進センター、報道機関等に対し、駐車車両への衝突による交通事故の実態、交通渋滞の状況等違法駐車の危険性、迷惑性についての情報を提供するなど、違法駐車抑止のための広報活動を行っている。
 また、地域交通安全活動推進委員等の民間の指導者を対象とする研修会の開催、違法駐車の実態等に関する資料の配布等違法駐車抑止のための活動が効果的に行われるよう必要な支援を行っている。地域交通安全活動推進委員は、平成31年4月1日現在、約1万8,000人が公安委員会から委嘱を受け、広報啓発活動、協力要請活動、相談活動等を行っている。

 イ 駐車対策協議会等の設立による各種駐車対策の推進
 警察では、地方公共団体、道路管理者等とともに駐車対策協議会等を設立し、地域における駐車問題を協議・検討して、各種の駐車対策を推進している。

 ⑵ 駐車場の整備等の働き掛け
 ア 駐車場の整備状況
 平成30年3月末現在、駐車場の設置箇所数は、
 ・ 都市計画駐車場※1が441箇所(11万6,332台分)
 ・ 届出駐車場※2が9,609箇所(182万3,115台分)
 ・ 附置義務駐車施設※3が7万1,511箇所(327万1,052台分)となっている
(図表7参照)。

 イ 駐車場の整備及び有効利用についての働き掛け
 警察では、地方公共団体に対し、駐車場附置義務条例の制定、公共駐車場の整備等を働き掛けており、平成30年3月末現在、駐車場附置義務条例を制定している自治体の数は197自治体(荷さばき駐車場の附置を義務付けている自治体の数は88自治体)となっている。
 また、駐車対策協議会等の場を通じて、休日や時間外における駐車場の開放等を働き掛けるなど、既存駐車場の有効な利用について積極的な働き掛けを行っている。

図表7 駐車場の整備状況(平成20年度末~29年度末)


注1 国土交通省「自動車駐車場年報(平成30年度版)」から作成
 2  自動車保有台数は、登録自動車(道路運送車両法第4条)に軽自動車(同法第60条、ただし二輪を除く。)
を加えた数値である。
※1 都市計画駐車場
 都市計画に定められた駐車場をいう。円滑な都市活動を支え、都市生活者の利便性の向上、良好な都市環境を確保するうえで必要な施設として定められる。
※2 届出駐車場
 都市計画区域内において、自動車の駐車の用に供する部分の面積が500㎡以上の路外駐車場でその利用について駐車料金を徴収するものを設置する者は、国土交通省令で定めるところにより、路外駐車場の位置、規模その他の必要事項を都道府県知事等に届け出なければならない。この届出をされた路外駐車場を届出駐車場という。
※3 附置義務駐車施設
 地方公共団体は、駐車場整備地区内等において、延べ面積が一定規模以上の建築物を新築・増築する者に対し、条例で、その建築物又はその建築物の敷地内に自動車の駐車のための施設を設けなければならない旨を定めることができる。この条例に基づき附置される駐車施設を附置義務駐車施設という。

7 バリアフリーのための駐車対策の推進
 警察では、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に基づく重点整備地区の生活関連経路を構成する道路等、高齢者、障害者等が生活上利用する施設の周辺等において、バリアフリーを妨げる横断歩道上、バス停留所周辺、視覚障害者誘導用ブロック上等の違法駐車車両に対する取締り、違法駐車防止についての広報啓発活動等を推進している。

8 自動車の保管場所の確保対策の推進
 ⑴ 自動車保管場所証明等
 ア 自動車保管場所証明等
 道路が自動車の保管場所として使用されることを防止するため、自動車の保管場所の確保等に関する法律(以下「保管場所法」という。)に基づき、登録自動車の保管場所証明書の交付、軽自動車の保管場所に係る届出の受理等を行っている。平成30年中の自動車保管場所証明申請の受理件数は786万1,563件であった。(図表8参照)。

図表8 自動車保管場所証明申請受理件数の推移(平成20年~30年)


 イ 保管場所標章の交付
 警察署長は、登録自動車の保管場所証明書を交付したとき、軽自動車の保管場所の届出を受理したとき等は、自動車の保有者に対して保管場所標章を交付しており、保管場所標章の交付を受けた者は、保管場所標章を自動車の後面ガラスに、後方から見やすいように表示することとされている。平成30年中の保管場所標章の交付件数は909万7,194件であった。(図表9参照)。

図表9 保管場所標章交付状況


 ウ 自動車保管場所証明等の適用地域
 自動車保管場所証明等の適用地域は、登録自動車については東京都特別区並びに全ての市、町及び一部の村、軽自動車については東京都特別区及び一部の市とそれぞれ定められている。

 ⑵ 保管場所法違反等の取締り
 道路上を自動車の保管場所として使用し、又は自動車を道路上に長時間駐車するいわゆる青空駐車や、自動車の保管場所を確保していないにもかかわらず、自動車を保有するために、自動車の使用の本拠の位置、保管場所の位置等を偽って保管場所証明を受けるいわゆる車庫とばしは、道路使用の適正を阻害するほか、道路交通の安全と円滑に支障を及ぼすことから、保管場所法違反等の取締りを推進している。
 平成30年中の青空駐車等の取締件数は930件、車庫とばし事件の検挙件数は12件であった。

⑶ 自動車保有関係手続のワンストップサービスの運用拡大
 自動車登録・検査、保管場所証明、車体課税の納税・申告等の制度所管官庁の異なる行政手続をオンラインで一括して実施可能とする自動車保有関係手続のワンストップサービス(「OSS」)については、令和元年11月末現在、42都道府県警察において運用しているところである。平成28年度からOSS警察共同利用型システムの運用を開始しており、将来的に全国で同システムが利用可能となるよう、今後も運用の拡大が図られる予定である。