平成29年秋季駐車場研修会参加レポート
研修会参加レポート
首都高速道路株式会社
事業開発部事業推進課
課長代理 椿 浩宜
平成29年秋季駐車場研修会は、各地の協会から参加した48名で10月19日(木)から20日(金)までの間、北海道札幌市他において行われました。
今回の研修会は、座学研修を中心に企画され、創立50周年を迎えた札幌駐車協会の記念講演会も併せて開催されました。詳細は、以下のとおりです。
10月19日(木) 研修1日目
北海道札幌市の京王プラザホテル札幌の3階「扇の間」に14時に集合し、企画委員長の加藤様の開催挨拶の後、事務局の中村様の司会のもと、座学研修が行われました。
1.座学研修
①演題:「札幌市における立地適正化計画の策定」
講師:札幌市まちづくり政策局都市計画部都市計画課土地利用係長 梅澤 様
札幌市の概況、都市づくりの経緯、都市づくりの基本方向の転換、立地適正化計画の検討着手、札幌市立地適正化計画の概要、計画策定後の取組についてご説明いただき、その後質疑応答となりました。この研修で、駐車場整備に当たっては、まちづくりに貢献し、より一層の利便性向上や収益拡充のため、各都市の立地適正化計画等都市全域を見渡したマスタープラン等の行政の考え方と協働、連動し、街並みの賑わいや都市魅力の創出に資する駐車場となるような施策の必要性を強く感じました。また、活発な質疑応答もあり、札幌市の状況の理解を深めるとともに、他の都市での事例の参考となりました。
②演題:「これからの駐車場エリアマネジメントについて」
講師:日本大学名誉教授 高田 様
札幌駐車協会創立50周年の記念講演会として、駐車学の第一人者である日本大学の高田名誉教授から、駐車場からその地区をどう考えていくのか等のご講演がありました。失敗事例も交えつつ、海外を含む具体的な事例を示されながら、駐車施策のない地区の衰退、都市再生と駐車政策についてご講演いただき、非常にわかりやすく、興味深いものでした。また、日本ではなぜ地区の交通計画の管理ができないのか等の課題をわかりやすくご解説いただき、自動運転を見据えたこれからの駐車施策等をご教示いただきました。これは、現在各地で直面している課題であり、今後解決するべき問題であることから大変有意義な研修となりました。
2.駐車場視察
座学研修の後、北海道建設会館駐車場まで徒歩で移動し、17時から同会館会議室で㈱北海道建設会館の方から概要説明を受けた後、2班に分かれて、視察を行いました。
北海道建設会館駐車場は、三菱重工業㈱が建築した円筒のエレベーターシャフトをポイントとした美しい外観を持つ、珍しい構造となっております。以前は、東京地区や京都地区でも同様の構造の駐車場があったそうですが、現在では旋回式立体駐車場として稼働しているものは北海道建設会館駐車場のみとのことです。なお、この駐車場は、永年に亘り地域に貢献してきた点や歴史的な機械式駐車場を適切なメンテナンスによって、管理運営している点が評価され、平成17年(2005年)に第2回日本ベストパーキング賞選考委員長賞を受賞しています。
1階の駐車場入口付近では、入庫に係るご説明をいただきました。お客様は、車両を自走でエレベーターゲージ内に乗り入れ、係員がエレベーターにより所定階に誘導致します。なお、お帰りの際は、1階で精算を済ませると、自動で出庫表示板に階数・車室が表示され、お客様は、乗用エレベーターで自分の車がある階に行き、車に乗ってお待ち頂くと、係員が車両用エレベーターでお迎えに上がるとのことです。地下の旋回機械室では、駐車場設備を請け負っている三菱電機ビルテクノサービス㈱の担当者からご説明をいただきました。視察者の多くが駐車場事業の経営者ということもあり、主にメンテナンスに係る経営視点での質問が多数あり、当該駐車場が安全性を有し、高い耐久性を備えていることへの理解を深めていました。
9階では、お客様が駐車するスペースを視察し、実際の駐車方法の確認を行いました。車両は駐車階に到着したら、エレベーターを降り、原則として、エレベーターシャフトを中心として、放射状に格納されます。また、駐車階から同じ階のオフィスへ直行できるという利便性も備えていることを確認しました。
屋上では、エレベーター機械室を視察しました。地下から屋上まで視察すると、北海道建設会館駐車場が円筒のエレベーターシャフトから構成されていることがよく分かりました。
3.意見交換会
18時から、京王プラザホテル札幌1階「グランシーズンズ」において、全日本駐車協会及び札幌駐車協会の合同意見交換会が行われました。全日本駐車協会髙木会長の乾杯のご挨拶で始まり、参加者同士でざっくばらんな意見交換を行うことで多くの参考意見をいただき、非常に有意義な時間となりました。最後に、創立50周年を迎えた札幌駐車協会の岩波会長の中締めの挨拶で散会となりました。
10月20日(金) 研修2日目
研修2日目は、貸切バスで移動する視察中心の研修で、札幌市周辺エリアの歴史的施設を視察しました。7時45分に京王プラザホテル札幌のロビーに集合した後、まずは市内をドライブし、札幌市時計台の前では、8時の鐘の音を聞くことができ、幸先のいいスタートとなりました。その後も北海道神宮や円山公園といった観光スポットを車内観光しながら、大倉山ジャンプ競技場に向かいました。
1.大倉山ジャンプ競技場
大倉山ジャンプ競技場は、昭和47年(1972年)に開催された冬季オリンピック札幌大会でジャンプ競技場の開催場所になったことでも知られており、現在はサマージャンプやナイタージャンプも可能な近代的設備が整い、国際的な大会が数多く開催されている場所です。大倉山ジャンプ台の頂上までは片道5分の二人乗りリフトで向かいますが、ジャンプ台の急斜面を間近に体感することができます。
リフトを降りて向かう大倉山の山頂では、紅葉の山々や札幌の街並みを展望することができます。ジャンプ台を見下ろし、選手の気分を味わうことができました。
なお、大倉山ジャンプ競技場には、大画面映像によるリアルなバーチャルジャンプ体験ができる等、選手だけが知る世界を体験できる札幌オリンピックミュージアムや大倉山限定の銘菓等の販売店やレストラン等がある大倉山クリスタルハウスが併設されています。
2.ニッカウヰスキー北海道工場余市蒸留所
大倉山ジャンプ競技場視察後、札樽自動車道を経て、道中、小樽運河等小樽市内の観光スポットを車中で視察しながら、ニッカウヰスキー北海道工場余市蒸留所に向かいました。大正7年(1918年)にスコットランドへ単身留学し、ウイスキー製法を日本人として初めて学び、日本最初の国産ウイスキーを世に出したニッカウヰスキー㈱の創立者故竹鶴政孝さんは、余市のこの地がスコットランドの気候、風土や立地条件が似ていることを発見し、ここをウイスキー製造の地として原酒工場を建設しました。
また、NHK連続テレビ小説「マッサン」のモデルとなった竹鶴政孝さんとリタさん。ドラマでのシーンを思い出しながら、視察しました。
日本のウイスキーは、無尽蔵のピート(草炭)、湧き出る水、オゾンに恵まれた空気等によって、湿潤で冷涼な環境の中で生まれることがよく理解できました。また、余市蒸留所では、香り高く重厚で力強いモルトを生み出せるよう、ストレートヘッド型と言われる胴体部分に膨らみのないポットスチルの形状と石炭直火蒸留で原酒を作っていました。
昭和9年創業当時の北海道工場敷地は、余市川右岸と登川との合流点で、広大な湿地となっていましたが、ウイスキー工場は竹鶴政孝さんや様々な人々の協力により竹鶴政孝さんがスコットランドで見た風景をそのまま再現したとのことです。日本のウイスキーの生みの親となった竹鶴政孝さんは、信念を曲げずに前進し、今日のニッカウヰスキーの隆盛という一大事業を成し遂げました。余市町の工業発達の足跡を示す文化的遺産の一つとなった建物に深い感銘を受けました。
3.小樽貴賓館(旧青山別邸)
ニッカウヰスキー北海道工場余市蒸留所の視察後は、小樽に戻り、小樽貴賓館(旧青山別邸)に移動し、小樽貴賓館で「にしんお重」を食べながら、意見交換を行いました。
昼食後は、旧青山別邸を視察しました。小樽は、北海道の歴史、文化、経済に大きく貢献した街で、明治時代には国際貿易港にも指定され、日本でも指折りの企業や大手銀行が軒をつらねる等、大変な繁栄ぶりであったようです。このため小樽には、にしん漁で財をなした、にしん御殿等の豪商が残した文化的遺産が数多く残されています。そのなかで、旧青山別邸は、にしん漁の網元である青山家が出身地である山形県の酒田市の本間邸の屋敷を手本に小樽の地に築いた別荘です。
旧青山別邸の内部は、写真撮影が禁止となっているため、写真の掲載はできませんが、当代一級の最高の木材を使い、来客用の部屋の前庭に枯山水の庭園が作られている等、豪華な屋敷となっており、現在の価格に換算するとなんと総工費は35億円位といわれています。なお、案内していただいた担当者の方が、テンポの良くユニークで分かりやすい説明であったので、視察者一同感心され、豪商であった青山家が思い描いた夢を重ね合わせながら楽しみました。
今回の研修会は、秋が深まった北海道で天気にも恵まれました。また、事務局の皆様のおかげで有意義な研修会となりましたことを、この場を借りて改めてお礼申し上げます。