駐車対策の現状2017
駐車問題の現状
1 瞬間路上駐車台数
平成27年に実施した調査によると、東京都特別区における瞬間路上駐車台数は約5万6,000台(前年比約3.1%減少)であり、大阪府内における瞬間路上駐車台数は約2万 4,000台(前年比約7.0%増加)であった(図表1参照)。平成18年と比較すると、違法駐車は大幅に減少しているものの、依然として幹線道路 等における交通渋滞の要因となっているほか、駐車車両への衝突事故や駐車車両に起因す る交通事故が後を絶たず、道路交通への著しい障害となっている。
図表1 東京都特別区及び大阪府における瞬間路上駐車台数の推移(平成18年~27年)
2 駐車車両への衝突事故等
平成27年中の駐車車両への衝突による交通事故については、人身事故の発生件数が976件、死亡事故の発生件数が43件(死者44人)であった(図表2参照)。また、駐車車 両に起因した交通事故については、人身事故の発生件数が1,721件、死亡事故の発生 件数が10件(死者10人)であった(図表2参照)。
図表2 駐車車両への衝突による交通事故の推移(平成18年~27年)
3 駐車問題に関する110番通報
平成27年中の110番通報のうち駐車問題に関する要望・苦情・相談の件数は約12万5,000件であり、要望・苦情・相談に関する110番通報件数の約14.2%を占めるなど、駐車問題に関する国民の関心の高さを示している(図表3参照)。
図表3 駐車問題に関する110番通報件数の推移(平成18年~27年)
総合的な駐車対策の推進
1 駐車規制の延長距離
駐車規制は、駐車による交通の危険を防止し、交通の円滑を図るため、道路の構造や地域の交通実態に応じて実施している。 平成27年度末現在、全国の都道府県公安委員会が行っている駐停車禁止又は駐車禁止規制の規制延長距離は約17万㎞であり、一般道路の実延長距離約121万400km(平成26年4月1日現在)に対する規制率は約14%である。
2 より合理的な駐車規制の推進
駐車規制については、より合理的なものとなるようきめ細かな見直しを推進しており、平成16年1月から平成28年3月末までの間に、全国において、約4万3,400区間(約3万2,700km)にわたる駐車規制の解除・緩和を図っている。今後も、必要やむを得ない駐車需要への対応が十分でない場所を中心に、地方公共団体、道路管理者、関係事業者等による自主的な取組を働き掛けるとともに、以下の点に留意して、交通実態の変化に即した駐車規制を推進することとしている。
⑴要望意見への積極的対応
駐車規制は、交通参加者や地域住民の要望意見に十分配慮しつつ、交通の安全と円滑を図る観点から、実施又は緩和を行っており、特に駐車規制の緩和に係る要望であって、地域住民等の意見に基づき具体的な道路の部分を特定して行われるものについては積極的な検討を行い、その結果に基づいて必要な対策を講じている。
⑵物流の必要性への配意
物流業務が国民生活上重要な役割を果たしている一方、中心市街地を始めとする都 市内において、道路上での無秩序な荷さばき等が交通渋滞等を引き起こしている例も ある。そこで、貨物の積卸し又は集配のため、貨物自動車の駐車が必要不可欠と認められる道路の部分について、一定の条件の下で貨物自動車を駐車規制の対象から除くこととするなど、物流業務に配意した駐車規制の見直しに努めている。
≪荷さばき駐車対策の実施状況≫
商業地区等における荷さばき駐車対策として、貨物車の荷さばき需要の多い時間帯を貨物 車に限り駐車規制の対象から除く(駐車可能)とする規制の緩和例
⑶時間制限駐車区間規制の実施の検討
路外駐車施設の整備が十分でなく、路上における短時間の駐車の需要が高いと認められる道路の部分について、当該部分における駐車秩序を確保する必要があるときは、時間制限駐車区間規制の実施を検討することとしている。
平成27年度末現在、全国の都道府県公安委員会が行っている時間制限駐車区間規 制は1,649区間(約344km)であり、パーキング・メーター1万6,064基、 パーキング・チケット発給設備1,143基(駐車可能枠数7,209台分)をそれぞれ 設置し、管理している(図表4参照)。なお、パーキング・メーター及びパーキング・チケット発給設備のうち、利用率が低いものについては、撤去を検討することとしており、撤去後は自転車レーンの整備、歩道拡幅等既存の道路空間の有効活用に配意している。
≪時間制限駐車区間規制の実施状況≫
図表4 パーキング・メーター等の設置状況の推移(平成18年度~27年度)
※注
- 「メーター」はパーキング・メーターを、「チケット」はパーキング・チケット発給設備をそれぞれ示す。
- パーキング・メーターの駐車可能枠数は、設置基数と同数である。
≪パーキング・メーターの撤去による道路空間の有効活用状況≫
⑷二輪車に配意した駐車対策の推進
二輪車の駐車需要が満たされていない地域については、地方公共団体、道路管理者、民間事業者等に対して二輪車の駐車場の整備を働き掛けているほか、地域の交通実態 等に応じ、駐車規制の対象から二輪車を除くなど、きめ細かな対応に努めている。
≪二輪車に配意した駐車対策の実施状況≫
≪二輪車駐車場整備状況の年別推移(都内)≫
その他の駐車対策事例
夜間の客待ちタクシーの駐車により、慢性的な渋滞が問題となっていた歓楽街の幹線道路において駐停車禁止規制を実施するとともに、周辺の他の道路において客待ちタクシーを対象とした駐車可規制等によりタクシーの客待ち場所を確保し、タクシー業界団体に対して駐車可能場所での客待ちの促進を働き掛けて、当該幹線道路から客待ちタクシーの駐車の解消を図った。
あわせて、当該幹線道路におけるタクシー業界団体による自主ルールづくり(空車の通行制限等)とその励行を働き掛け、通行するタクシーの総量抑制を図るなどの総合的な対策により交通渋滞を解消した。
3 高齢運転者等専用駐車区間制度の運用
身体機能の低下が運転に影響を与えるおそれのある高齢運転者等を支援するため、道路標識により高齢運転者等専用駐車区間に指定されている場所では、高齢者等が運転し、都道府県公安委員会が交付した高齢運転者等標章を掲示した普通自動車に限り、駐車又は停車をすることができることとしている。
⑴高齢運転者等専用駐車区間の設置状況
平成27年度末現在、高齢運転者等専用駐車区間の設置箇所数は、
- 高齢運転者等専用駐車区間が477箇所(1,446台分)
- 高齢運転者等専用時間制限駐車区間が4箇所(5台分)
となっており、高齢運転者等の利用が多い官公庁、病院及び郵便局・銀行等の周辺道路に設置している(図表5参照)。
≪高齢運転者等専用駐車区間の設置状況≫
⑵高齢運転者等標章交付状況
平成27年度末現在の高齢運転者等標章の有効枚数は約6万300枚で、道路交通法第45条の2第1項第1号に掲げる者(70歳以上の者)に対し約5万8,100枚、同第2号に掲げる者(両耳の聴力が補聴器を用いても10メートルの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえない程度の聴覚障害のあることを理由に免許に条件を付されている者及び肢体不自由であることを理由に免許に条件を付されている者)に対し約600枚、同第3号に掲げる者(妊娠中又は出産後8週間以内の者)に対し約1,600枚を交付している。
4 違法駐車の効果的な取締り
⑴違法駐車の取締り
平成18年6月から現行の駐車対策法制が施行され、警察署長は、放置車両の確認事務を都道府県公安委員会の登録を受けた法人に委託することができることとされた。平成28年4月1日現在では、全国402警察署において、54法人に委託され、約2,000人の駐車監視員により、地域住民の意見、要望等を踏まえて策定・公表されているガイドラインに沿った、メリハリのある違法駐車の取締りが行われている。平成27年中の取締り状況は、次のとおりであった。駐車違反取締件数140万8,796件(うち放置違反金納付命令114万1,472件)
- 駐車違反取締件数
140万8,796件(うち放置違反金納付命令114万1,472件) - 放置車両確認標章の取付件数
139万4,977件(うち駐車監視員によるもの97万7,003件)また、平成27年中、放置違反金を納付しなかった者に対する滞納処分を1万6,311件(徴収件数)、車検拒否を1万9,311件実施し、放置違反金納付命令を繰り返し受けた常習違反者に対する車両の使用制限命令を2,722件行った。
⑵悪質な駐車違反に係る責任追及
放置駐車違反のうち、交通事故の原因となった違反や常習的な違反等悪質な違反については、運転者及び使用者の責任追及を図っている。
【事例】
- 放置違反納付命令後の督促状の送付を受けながらも納付しない悪質滞納者に対して、道路交通法に基づき、給与の差押えによる強制徴収を実施した。
- 繁華街において、駐車違反の取締りを免れようと、他の者に交付された駐車禁止に係る除外指定車標章を複数回、不正に使用した者を偽計業務妨害罪で通常逮捕した。
⑶違法駐車車両の移動等の措置
道路における交通の危険を防止し、又は交通の円滑を図るため必要があるときは、移動保管措置を行い、違法駐車車両の早期排除に努めている。平成27年中の移動保管措置件数は321件であった。
5 駐車対策のための各種システムの運用
⑴違法駐車防止条例の制定
ア 違法駐車防止条例の制定の働き掛け等
違法駐車防止条例は、自治体に違法駐車の防止に関する必要な施策の策定及び実施を義務付ける一方で、市民に違法駐車防止の努力及び自治体が行う駐車対策への協力を義務付けることにより、行政と市民が一体となって違法駐車の防止に取り組むことを趣旨とするものであり、警察では、各自治体に対し当該条例の制定を働き掛けるとともに、その運用に必要な協力と支援を行っている。平成28年4月1日現在、違法駐車防止条例を制定している自治体の数は273(202市14区55町2村)となっている(図表6参照)。
イ 条例制定自治体における違法駐車防止活動
条例を制定した自治体においては、条例に基づいて違法駐車防止の重点地域や重点路線を定め、違法駐車防止指導員等による広報啓発活動等の違法駐車防止活動が積極的に行われている。
図表6 違法駐車防止条例の制定の推移(平成19年~28年)
⑵関係機関・団体等との連携の強化
ア 広報啓発活動
警察では、都道府県交通安全活動推進センター、報道機関等の協力を得て、違法駐車に起因する交通事故の実態、交通渋滞の状況等違法駐車の危険性、迷惑性についての情報を提供するなど、違法駐車抑止のための広報活動を行っている。また、地域交通安全活動推進委員等の民間の指導者を対象とする研修会の開催、違法駐車の実態等に関する資料の配布等違法駐車抑止のための活動が効果的に行われるよう必要な支援を行っている。地域交通安全活動推進委員は、平成28年4月1日現在、1万8,296人が公安委員会から委嘱を受け、広報啓発活動、協力要請活動、相談活動等を行っている。
イ 駐車対策協議会等の設立による各種駐車対策の推進
警察では、地方公共団体、道路管理者等とともに駐車対策協議会等を設立し、地域における駐車問題を協議・検討して、各種の駐車対策を推進している。
⑶駐車場の整備等の働き掛け
ア 駐車場の整備状況
- 平成27年3月末現在、駐車場の設置箇所数は、
- 都市計画駐車場※1が453箇所(11万9,543台分)
- 届出駐車場※2が9,033箇所(169万9,455台分)
- 附置義務駐車施設※3が6万8,135箇所(305万8,756台分)
となっている(図表7参照)。
イ 駐車場の整備及び有効利用についての働き掛け
警察では、地方公共団体に対し、駐車場附置義務条例の制定、公共駐車場の整備等を働き掛けており、平成27年3月末現在、駐車場附置義務条例を制定している自治体の数は198自治体(荷さばき駐車場の附置を義務付けている自治体の数は89自治体)となっている。
また、駐車対策協議会等の場を通じて、休日や時間外における駐車場の開放等を働き掛けるなど、既存駐車場の有効な利用について積極的な働き掛けを行っている。