令和2年新春駐車場研修会開催
一般社団法人全日本駐車協会
一般社団法人日本パーキングビジネス協会
公益社団法人立体駐車場工業会
一般社団法人日本自走式駐車場工業会
令和2年新春駐車場研修会が4団体共催にて開催されました。
日 時:令和2年2月7日(金) 13時25分~17時
場 所:コンファレンススクエア エムプラス「サクセス」
(東京都千代田区丸の内2-5-2 三菱ビル1階)
参加者:129名(内、当協会関係86名)
1.「駐車場政策の最近の動向について」
講師:国土交通省 都市局 街路交通施設課 企画専門官 田畑 美菜子 様
<概要>
【駐車場法関連法規のトピックス】
これまでも、まちづくりの観点から駐車場を集約したり、地域のニーズに応じた柔軟な配置ができる制度改正を行ってきたが、その一環として、本日、都市再生整備計画における路外駐車場の配置等基準・出入口規制等を規定した都市再生特別措置法改正案が閣議決定された。これについては、後ほど説明する。
【今後の駐車場政策の方向性】
駐車場の整備は着々と進み、一方、自動車保有台数は頭打ち傾向で、駐車場は量的には充足しつつある。また、コイン式駐車場の増加によって小規模な駐車場が増えている。駐車場政策の方向性は、「量」的整備から「質」的整備に変わっているのが大きなポイントである。荷捌き駐車施設、自動二輪車駐車場、観光バス駐車場、バリアフリー化、安全性の確保された機械式駐車装置の普及促進など、多様なニーズへの対応が必要である。また、国土交通省としては、まちづくりと連携した駐車場施策の推進に力を入れている。
【「まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン」について】
平成30年7月に「まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン(基本編)」を作成し、自治体担当者用に、まちづくりと連携した駐車場コントロールに対する基本的な考え方を示した。平成31年3月にはケーススタディを盛り込んだ形で同ガイドラインの「実践編-調査・分析」を発出し、需給状況の具体的な把握方法や供給量・需要量の適正化の進め方等を示している。駐車場の需要分析においては“駐車目的”を把握する事が重要であり、自治体等から駐車場入出庫データの提供等の相談などがあった際にはご協力いただきたい。
【「居心地が良く歩きたくなるまちなか」について】
駐車場に関わるまちづくり政策の最近の動きとして、2019年2月から、「都市の多様性とイノベーションの創出に関する懇談会」という有識者会議が始まった。その中で、都市のあり方、まちづくりの方向性が議論され、「居心地が良く歩きたくなるまちなか」をキーワードとして進めていくことになった。「居心地が良く歩きたくなるまちなか」のイメージは「Walkable」(歩きたくなる)、「Eye level」(まちに開かれた1階)、「Diversity」(多様な人の多様な用途、使い方)、「Open」(開かれた空間が心地よい)である。多様性を持つ人々が自由に交流する中で、様々な発想やイノベーションが生まれていく事を支えていくための空間として、都市の公共空間が重要であると考えている。官民が連携し、例えば街路と隣接する民間の土地とが繋がるような空間や広場を形成する等、通行するだけの街路空間ではなく、休息したり、自由に時間を過ごしたりできるようなまちなかを目指していく。
「居心地が良く歩きたくなるまちなか」というまちづくりの方向性を受けて、「まちなか」を歩行者中心の空間としていくには、自動車の流入抑制、駐車場の出入口や配置コントロールを促進する制度の充実を図るべきとされ、冒頭に触れた都市再生特別措置法の改正が検討され、本日閣議決定された。 駐車場に関する内容としては、自治体が指定した「居心地が良く歩きたくなるまちなか」エリアについて、路外駐車場の配置に関する基準を定め、路外駐車場を設置する際の事前届出制度を導入することができるようになる。条例で定める規模以上の路外駐車場を設置する場合には事前届出が必要となり、基準に満たない場合には勧告することができるなど、緩やかに駐車場の配置をコントロールしていくものである。また、「まちなかエリア」の中でもメインストリート等については道路への駐車場出入口の設置を制限できる仕組みも設けた。
歩行者の空間と自動車が走って駐車をする空間を上手に共存させていくために、この制度を活用してもらえると、まちづくりの観点から有効であると考えている。
【駐車場設備等の高質化について】
都市が抱える様々な課題解消に貢献できるような取り組みが駐車場に求められている。具体的には、①地球温暖化対策(公共交通支援のためのパーク&ライド駐車場など)②災害時対策(災害用設備の設置など)③駐車場利便性向上(予約システムやユニバーサルデザイン対応など)、④快適な都市環境(荷捌き拠点、観光拠点機能の併設など)があげられる。
【駐車場の附置義務制度の柔軟化について】
全国において、過去約25年間で、駐車場台数は約2.9倍増加している一方で、自動車保有台数は約1.3倍にとどまっている。特に東京23区においては、過去10年間で、駐車場台数は約1.24倍増加している一方で、自動車保有台数は約0.91倍と減少している。都心部の公共交通の利便性の高いエリアにおいては、駐車場の過剰感が出ているところがある。このような背景から横浜市や金沢市等の自治体では附置義務条例の見直し等を実施している。東京都では地域ルールに関する特例を設けて、銀座や大丸有等で地域ルールを適用している。この他にも、特定エリアにおける附置義務の緩和措置等が名古屋市、京都市、神戸市、福岡市などで進められている。
また、附置義務制度の特例として都市再生駐車施設配置計画制度が平成30年に創設された。都市再生緊急整備地域において、附置義務駐車場の台数と配置に関する計画を定めた場合は附置義務条例による一律的規制内容は適用されず、この計画に即して駐車場を設ける事で足りるとして、柔軟な対応が可能となった。
【個別ニーズへの対応について】
荷捌き駐車施設の不足により路上での荷捌きが多く見られる。快適な歩行空間や円滑な道路交通の確保のために、荷捌き駐車対策は重要で、平成30年度末現在、附置義務条例制定149都市の内、88都市で荷捌き駐車施設の附置を規定した条例が制定されている。
全国の自動二輪車駐車場は平成30年度末現在、2,348箇所で、平成18年比で約9.4倍に増加している。地域によって過不足はあるものの、総じて不足しているため、駐車場整備を考える際に考慮してもらいたい。
バリアフリーについては、通常国会に提出される法改正において、いわゆる「心のバリアフリー」ということで、真に必要な方が円滑に利用できるような環境整備を進めていくことになる。
【機械式駐車装置の安全対策について】
機械式駐車設備については、設置後の維持管理が課題であり、平成30年7月に「機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針」を出し、保守点検業者の選定、保守点検内容等を示している。
2.「東京2020オリンピック・パラリンピックの交通対策」
~駐車場対策など交通マネジメントの取組について~
講師:公益財団法人 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
輸送局次長 蓮見 有敏 様
※本講演は東京2020大会の延期発表(3月24日)の前に行われたものです。
<概要>
大会本番まで、後5か月程となった。これからの一日一日を大切にしながら準備していきたい。
さて、IOCからは、東京2020大会の成功のカギは、「暑さ対策」と「輸送」だと言われている。
輸送局としては、「輸送」に関して、望ましい交通状況を実現する為に、様々な方策を用いて、人の流れや物流を調整・コントロールしていこうと考えている。
本日は、交通対策としての「交通マネジメント」の取組と、その一環として、皆様にご協力をお願いさせて頂く「駐車場対策」につき、説明する。
本大会には、約11,000人の選手が参加するが、これらの選手や関係者は、組織委員会が用意した交通手段(バス約2,000台、乗用車3,500台)を用いて直接輸送することとしており、一方、780万人を見込む観客には、公共交通機関を利用して移動してもらう事を基本としている。本大会では、ロンドン大会の「オリンピック・パーク」のような会場配置(敷地内に、メイン会場、複数の競技会場、選手村及びメディアセンター等が配置される)になっておらず、分散している為、選手達が、競技会場と主要施設の間を移動する際に通行するルートにおける渋滞発生が懸念されている。特にメインの輸送ルートとなる首都高速道路については、交通対策を何も行わなかった場合には、渋滞損失時間が現況の約2倍に悪化することが予想されていることもあり、大会時の交通混雑緩和のソリューションとして、交通マネジメントを実施することとしている。
交通マネジメントは、その実施により、「大会関係者や観客の安全で円滑な輸送の実現と都市活動の安定との両立を図る」事を目的としており、道路交通、公共交通において、多様な手法を用いて実施されるものである。
その構成は、以下の3つからなる。
①「交通需要マネジメント(TDM)」 交通需要抑制・分散・平準化を行う
②「交通システムマネジメント(TSM)」 道路状況に応じて交通の需給関係を高度に運用管理する
③「公共交通輸送マネジメント」 鉄道等の安全で円滑な輸送を実現する
昨年夏には、交通混雑緩和に向けた取組(TDM【テレワーク・時差出勤などのスムーズビズ等】+TSM【高速道路の本線料金所流入調整・入口閉鎖、一般道路の信号調整等】)を総合的にテスト済であり、結果として、選手達が通行するルートについて、円滑な交通流動を確保することが出来ている。一方、大会期間中の需要増や、大会が長期に及ぶ事などを勘案し、首都高速道路の流動確保のための追加対策が必要との判断から、首都高速道路については、料金施策(夜間割引と料金上乗せ)を追加することが決定している。
ここまで説明した交通マネジメントの全体像は、図1の通りとなる。
次に、会場周辺の交通対策については、競技会場等周辺一般道における交通混雑を緩和する為、図2の通り、エリアの区分やレーンの設定を行っている。この内、迂回エリアについては、会場周辺には、大会関係者や歩いて会場に向かう観客等が多数入ってくるので、交通が輻輳することから、なるべく通過交通を排除したいという目的で設定している。
最後に、会場周辺の駐車場対策について説明する。
本駐車場対策については、「大会関係者や観客の安全で円滑な輸送と経済活動の維持との両立が重要」という基本的な考え方の下、「会場周辺で空き駐車場を探す“うろつき交通”による交通渋滞等の抑制」に向けて取り組むものであり、その体制としては、国土交通省・警察庁・東京都・タイムズ24株式会社・三井不動産リアルティ株式会社・一般社団法人東京駐車協会・一般社団法人日本パーキングビジネス協会及び公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会にて、駐車場対策協議会を設立し、官民連携して、必要な検討と調整を行っている。
具体的には、「時間貸駐車場」を大会期間中に限って「予約専用駐車場」に転換することが有効と考え、「大会用駐車場予約サービスの導入」を検討している。既に本対策に関する実証実験を、時期・場所・対象者等を変えて2回実施しており、そこで得られた結果を分析し、サービスシステムの運用や現地対応に関する課題を把握しながら、検討作業を進めている。それらの成果については、運用マニュアルという形で纏まりつつあり、完成すれば、今後、皆様に本対策への参画をお願いする際の説明資料とする予定である。一般道における道路交通対策の一つである「大会用駐車場予約サービスの導入」推進には、駐車場事業者の皆様の取組が必要不可欠であるので、是非ともご協力賜りたい。
又、他の交通対策として「郊外でのパーク&ライドの促進」についても検討を進めているので、申し添えておく。
本大会開催によるレガシーの一つとして、“交通マネジメントの進化”を残したいと考えているので、駐車場事業者の皆様には、駐車場対策への参画を通じて、交通マネジメントの進化にご協力頂ければ幸いである。
3.「ナビゲーションサービスにおける駐車場情報の活用について」
講師:株式会社ナビタイムジャパン ビジネス開発部 担当部長 篠原 雄大 様
<概要>
【ナビタイムジャパン】
当社は2000年3月に設立した会社で、間もなく創立20年を迎える。経路検索の技術を軸に一般コンシューマー向けナビゲーションサービスや業務用システムへの技術提供を行なっており、最近ではMaaS事業にも携わっている。「経路探索エンジンの技術で世界の産業に奉仕する。」という経営理念の下、日々活動している。
一般コンシューマー向けサービスとして、公共交通機関、自動車、トラック、バイク、自転車など様々な移動手段に対応する経路検索サービスを提供しており、月間約5,100万アクティブユーザー、有料課金会員約480万ユーザーとなっている。
根幹となるナビゲーション技術が「トータルナビゲーション」で、徒歩・電車・バス・飛行機・車・タクシー・シェアサイクル等あらゆる移動手段を用いて、その日、その時刻、その場所でその人にとって最適なルートを提供することをコンセプトに技術開発を行っている。これを活用した代表的なサービスとして「NAVITIME」がある。様々な移動手段に対応したナビゲーションサービスで、複数の交通手段に対応したルート候補を表示する。電車では乗車ホーム番号、車両位置、駅出口番号等が表示され、徒歩ルートではカーナビのように音声でナビゲーションをする。路線バスでは、バス5台以上保有の全国のバス会社515社に100%対応しており、世の中に有意義な情報提供をしていると評価され、2018年にグッドデザイン賞を受賞した。最近ではシェアサイクルにも対応しており、一部のシェアサイクルではナビタイム画面から予約・決済ができるようになっている。
【カーナビアプリサービス】
カーナビアプリサービスは、基本型の「ドライブサポーター」と本格派の「カーナビタイム」の2つのグレードでサービス提供している。「カーナビタイム」では、通信圏外でもナビが可能となる他、渋滞をとことん避けて通るルート設定や自動車のサイズを予め登録すると車高車幅を考慮したルート設定が出来る等、上級者向けサービスを提供している。このサービスにドライブレコーダー機能を追加したことが評価され、2019年グッドデザイン賞を受賞した。
【駐車場情報の活用について】
ナビゲーションサービスの目的地検索において、「駐車場」ジャンルは常に1位(17%)にランクインしている。 ユーザーは目的地までの行き方とともに周辺の駐車場を探している。カーナビアプリでは地図上に駐車場アイコンが表示され、満空情報を持っている駐車場については満空表示を行っている。当社では約180社の駐車場事業者より定期的に駐車場情報を提供頂き、2020年1月時点での駐車場データは約95,000件と国内最大級の駐車場データベースを構築している。この内、満空情報表示は43,700件となっている。
満空情報は、ユーザーが検索する際の重要情報で、満空情報表示のある駐車場がユーザーに検索されやすいという結果が読み取れる。当社としても、満空情報の配信には力を入れており、複数の駐車場機器メーカーと連携している。駐車場事業者から駐車場の場所・名称・料金等の駐車場情報を予め提供頂き、機器メーカーから配信してもらう満空情報とマッチングする仕組みを構築している。
予約制駐車場についてもユーザーの関心が高く、多くの予約制駐車場事業者から情報提供してもらっている。
【MaaSの取り組み】
MaaS(Mobility as a Service)とは、鉄道・バス・タクシー・自転車などの移動手段を個別に利用登録・予約・支払いする対象としてではなく、統合された「1つのサービス」としてとらえる新たな移動の概念であり、フィンランドのヘルシンキの事例が良く知られている。
MaaSは、レベル1からレベル4の4段階に区分けされている。(レベル1:情報の結合 レベル2:予約・支払いの統合 レベル3:提供するサービスの統合 レベル4:社会全体目標の統合)
有識者の評価によると当社のサービスはレベル1に位置付けられている。当社のマルチモーダルルート検索であるトータルナビゲーションがこれに該当する。当社が提供するサービスには、レベル1を超えるものもあると考えている。
レベル2に該当するサービスには、飛行機・タクシー・シェアサイクルの予約・決済サービスがある。経路検索から飛行機の空席照会・予約、決済まで「NAVITIME」のサービス内で完結できる。タクシーについてはJapanTaxiと連携しており「NAVITIME」の経路検索でタクシールートが出た場合、その画面からタクシー予約・配車が可能となっている。また、シェアサイクルについても、最大手のドコモバイクシェアと連携してシェアサイクルの予約支払いが可能となっている。
レベル4に関する当社の取り組みを2つ紹介する。まず、首都圏の鉄道混雑緩和に関する取り組みが挙げられる。混雑を独自技術でシミュレーションし、ユーザーに可視化する事で混雑の分散を促している。ユーザーが混んでいる時間をさけたり、経路を変えるなど、混雑の分散化に寄与できれば良いと考えている。また、一部の路線では、鉄道事業者と連携して、車両単位で混雑を表示してユーザーに示している。
次に、移動ログデータによる公共交通最適化の取り組みについて紹介する。様々な移動手段に対応したナビゲーション事業を通して、ユーザーが実際に移動した大量のログデータが集まってきている。この移動ビッグデータを集計、分析し、自治体や交通事業者などが抱える移動に対する課題や交通最適化に対してレポート提供やコンサルティングを行っている。
ここにきて、MaaS実用化に向けてた様々な実証実験が各地で行われている。国土交通省が進めている新モビリティサービス推進事業では、2019年4月に19事業が選定され、その内、日立市、大津市の実証実験に経路検索APIの提供、アプリ制作等で参加している。また、トヨタ自動車は独自のMaaS事業「my route」を行っており、当社からトータルナビの技術提供を行なっている。そのほか、東京都の臨海副都心エリアで進められている「MaaS社会実装モデル構築に向けた実証実験プロジェクト」(期間:2020年1月16日~2月14日)で実験アプリを提供し、大津比叡山MaaSの取り組みでも経路検索機能を提供するなど、当社では様々な取り組みに参画している。
このようにMaaS実証実験が国内で盛んにおこなわれているが、現時点においては自家用車での移動を提案するサービスになっておらず、国内MaaSの中に、まだ駐車場情報が登場していない。今後、自家用車も含んだ移動を提案するサービスに進化していくと、おのずと駐車場が移動の重要な交通結節点になり、益々駐車場情報データの活用シーンが増えていくと思われる。
ナビタイムジャパンは人々のニーズや時代の流れに沿って、その時、その場所、その人にとって最適な移動経路を提供し、世の中の人々の有意義な時間を創出する活動を行っていく。
以上