海外研修レポート 平成28年 カンボジア・タイ編
平成28年秋季海外駐車場研修会(10月6日~10月12日) 参加レポート
前編(10月6日~9日) カンボジア・タイ編
日本ガレーヂサービス株式会社
取締役執行役員 御殿場支社長 小清水 琢治
一般社団法人全日本駐車協会が主催する、平成28年度秋季研修会に初参加させて頂きました。今回の研修会は10月6日~12日までの6日間の日程で、伴団長をはじめ日本全国より集結した総勢30名にて開催されました。
深夜の出発便だった事もあり、羽田国際空港にて10月6日の夜10:40から結団式が執り行われ、結団式後予定通り出発しました。約7時間のフライトでバンコク現地時間早朝5時に到着、バンコクからトランジットでそのままカンボジア・シェムリアップに向かいました。
10月7日(金) カンボジア・シェムリアップ
第1日目 シェムリアップの空港AM9:00到着後、冷房が程良く効いた空港を出ると、南国の湿気に包まれた温暖な気候でした。そのままバスに乗り込み、早速市内視察に向かいました。今回視察に訪問したカンボジアは年間を通じて高温多湿、気温は平均30℃~35℃。立憲君主制で人口約1,470万人、日本の約1/2弱の国土。シェムリアップは第3の都市で、首都プノンペンから北西に位置しタイ王国の国境寄りにあります。市の人口17万人、州全体では 90万人程。世界遺産であるアンコール・ワットが有名であり観光都市です。カンボジアの一般的な公務員の月給は約15,000円、周辺の東南アジア諸国と比較しても決して裕福な環境ではありません。現地にはリエル(100リエル≒3円)という通貨も存在しますが、インフレが激しく米ドルが一般的に使用されていました。車を所有しているのは一部の裕福層もしくは法人であると思われ、一般市民は主に125㏄の日本製モーターサイクルでの移動が主流。街中でも未舗装の道路わき敷地に、規則正しく並べられたバイクが多く停められていました。カンボジアの文字で記された看板が駐車スペースにありましたが、有料なのか大いに興味があるところです。
自動車の交通ルールは日本と同様に左側通行、第三の都市シェムリアップとはいえ目抜き通りの交差点でも信号は数える程しか設置されておらず、交通マナーも厳しいとは言い難いレベルであり、歩行者保護の観点は未発達な状態と感じます。夜は大通りでも電灯が少ないせいもあり真っ暗。歩行者や沿道のお店も非常に見えづらく危険ですが、交通量が少ない事からまだ大きな問題になっていないのかも知れません。
市内視察は先ずオールドマーケットと呼ばれる市民の台所である市場(マーケット)を視察しました。中心街に位置するオールドマーケットですが、周辺の道路や市街を見る限り、先進国と比較してまだまだ発展・改善余地が残る雰囲気でした。
10月8日(土) カンボジア・シェムリアップ(アンコール遺跡群)
第2日目 世界遺産アンコール・トム、アンコール・ワットを見学しました。
カンボジアは10月まで雨季なので生憎の天気でしたが、見学した時間帯は運よく強い雨も降らず、比較的過ごし易い天候に恵まれました。簡単に概要と歴史を説明すると、有名なアンコール・トムとアンコール・ワットはアンコール遺跡群のほんの一部であり、空港から程近いロケーションにある巨大な城砦都市遺跡です。800年以上も前の寺院で、12世紀後半当時の王によって建設されたと言われています。建設期間はそれぞれ30年以上の年月がかけられています。1113年~1145年にアンコール・ワットが建設され、36年後1181年~1218年にアンコール・トムが建設されています。ガイドによると建設にあたって使用された資材は砂岩で、寺院から離れた場所で加工され象によって全て運んだそうです。
世界遺産で有名なカンボジアですが、この国も戦争が繰り返された事でも有名です。初期の時代にはクメール人が住んでいましたが、幾度もシャム(現在のタイ)やインドの侵略を受けて浮沈はあったが、中世9~14世紀にインドシナ半島に覇を唱えています。歴代の王は時代により、また周辺国の影響も受け、仏教やヒンドゥ教に帰依し大寺院や城塞都市を数多く建立したと考えられています。以上からアンコール・ワットはヒンドゥ教、アンコール・トムは仏教の様相が色濃いそれぞれ特色の異なる遺跡でした。近代ではインドシナ戦争の影響も受けていますが、終戦後今日まで復興の道を着実に歩んでおり、可能性・将来性が感じられるこれから伸びる活気のある国でした。
10月9日(日)タイ バンコク《IHIタイランド高級コンドミニアム駐車設備視察》
第3日目 カンボジアからタイ バンコクへ移動し、バンコク市内にて日系企業駐車施設を視察。微笑みの国で有名なタイ王国はカンボジアと同様に立憲君主制、日本の約1.4倍の国土。人口6,600万人で、日系企業が多く進出している経済発展が目覚ましいASEANの国の一つです。国民から真に愛されるプミポン国王ラーマ9世が国王に即位してから70年が経っています(我々帰国翌日にご逝去)。気候はカンボジアと同様の気候で雨季でしたが、カンボジアとは異なり一日中降る雨はほとんどなく、夕方にスコールが猛烈に降る他は晴れる事が多く、日本の梅雨と比べると過ごし易い天候です。今回の移動はタイの学校の休暇期間と重なり、スワナプーン国際空港から45分位で大きな渋滞もなく市内に到着。最初に訪問したのはIHI現地法人(IHIアジアパシフィック タイランド)が立駐機械を納入した高級コンドミニアム「Space ID」。バンコク市内中心部に近く、東京の麻布・六本木といった 雰囲気の高級な住宅地に位置します。コンドミニアムのオーナー自らお出迎え頂きました。
当日はIHIタイランド現地駐在員の柳田ゼネラルマネージャーにご説明を頂きました。高級コンドミニアムである事から、マンション事業者はJapan Technologyを一つのブランディングに用い、とにかく歩くのを嫌がる現地の習慣も考慮し、車庫出しがエアコンの効いた待合室でスマートに対応できるように工夫されていました。
全てコンピューターで管理、カードキーによりオートメーション化され、車庫出し準備が整った際は画像左上のインターフェイスからメッセージで知らせてくれる仕組みになっています。IHIは人感センサーから機械資材を全て日本からの輸入で対応。現在はコスト的にまだ厳しい中、今後のマーケット需要を見越して営業活動を広げておられるとの事でした。(左下画像は車庫入り口アクセス。自動扉により安全管理されています)また機械操作は全て利用者自身で行う方式ゆえ、人感センサーなど事故防止策に最大限留意している事がうかがえます。外国人居住者も意識し、パネル操作説明や注意表記が全て高度な英文表示となっておりましたが、当エリアのタイ人住民の教養レベルも高い事が垣間見られます。
機械式立駐設備はエレベーター方式4基、それぞれ搬送エレベーターの両側に格納パレットが14段あり各基合計28台格納可能(車高1.55mに設計)、それが4基で総合計112台となっています。タイで売れ筋No.1のハイルーフ車やピックアップトラックは自走露地スペース20台分のみで対応。今回視察したマンション施設が外国人向けハイソサエティ向けである事から、セダンが主流と推測できます。
10月9日(日)タイ バンコク《自走式プレハブ駐車設備視察》
IHIタイランドを後にし、2つ目の視察ポイントへ移動。立体駐車場製造販売で有名な日本企業、日成ビルド工業株式会社のタイ現地法人Space Value社が納入した自走式プレハブ駐車設備を、現法社長の瀧ゼネラルマネージャーの案内で視察させて頂きました。
拝見させて頂いた設備は、自走式プレハブ駐車場で現地企業の社員用に設営された物件。3層4段のスキップフロア方式(半階ずつ自走して駐車)のプレハブ構造160台収容。昇降路の傾斜は日本よりやや緩めで、場内走路は幅員5メートルで全て一方通行とゆったりしており、事故防止配慮が行き届いていました。
フロアは当初コスト重視でエキスパンデッドメタルの予定が、女性のヒールが刺さる事や下の階への水漏れなどのトラブルを回避すべく、ドブ漬け亜鉛メッキ(2.3㎜厚)、滑り止めの凸部パターンの床用鋼板を採用し中国から調達との事。その他資材は現地進出の日系企業製品も多いが、主にタイ国産の鋼材等が使用されている様です。
車室は2.5m幅×奥行5m=12.5㎡とゆったりした設計(車室120台部分の延面積2,000㎡≒606坪)。
タイの建設コストは日本と比較すると人件費が安価な事から、リーズナブルに建設は可能との説明がありました。建設工期は基礎工事後4か月位で完成。一車室当たりの建設コストは日本より多少廉めの50万円と推測。日本の一般的なケースで1坪当たり15万円を㎡単価に割戻して12.5㎡で試算すると一車室当たり57万円と比較し2割弱廉い試算となります。